P社員控室

「サングラスをかけて、
デモで踊っています」
顔認証による監視システム「FacePRO」、その魅力を伝えるには

パナソニック社員を招いて、ソリューションについて聞いてみる連載「87会議室」。今回のテーマは、顔認証技術を用いた監視システム「FacePRO(フェイスプロ)」です。

いまや街のいたるところに設置されている監視カメラ。道路や建物では常に膨大な映像が記録されており、近年では、複数の監視カメラの映像から犯罪者の足取りを追跡する、といった捜査も行われています。しかし、映像の解析は人の手に委ねられており、たくさんの人が行き交う雑踏から目的の人物を探し出すのは時間と手間がかかります。

また、監視カメラの映像解析が必要となるケースは、犯罪が起きたあとが大半。犯罪を未然に防ぐには、監視カメラのみならず警備員の増員なども必要ですが、そのぶんコストも膨らんでいってしまうのです。

この課題を解決するのが、パナソニックの顔認証を用いた監視システム「FacePRO」です。監視カメラの映像からリアルタイムに顔を検出し、事前に登録した顔と照合。パナソニックのディープラーニング技術により、従来照合の難しかった斜め顔、サングラス・マスクをつけた人物を検知したり、複数のカメラから受信したデータを参照しながらその足取りを追跡したりなど、高精度の顔認証を活かした監視システムを実現しました。

既に海外でも高い評価を得ているFacePROは、どのような場面で活用されているのでしょうか。FacePROのグローバルプロモーションを担当している、パナソニック コネクテッドソリューションズ社 セキュリティシステム事業部 インテリジェントサーベイランスSBUの関口裕に話を聞きました。
(聞き手:井上マサキ)

写真:担当者
今回のコラムはこの方にお話を伺いました

関口 裕

98年入社。海外営業として2005年より6年間中国駐在し、セキュリティ製品の販促に携わる。帰任後、営業企画や商品企画を経て、2016年よりグローバルプロモーションを担当。セキュリティ関連製品のグローバル発表イベントやメディア対応などを行う。

「無意識に撮られた顔」だからこそ、高精度の顔認証が必要だった

今日はよろしくお願いします。さっそくですが、FacePROとはどういう製品なのか教えていただけますか?

ディープラーニングの技術を活用した顔認証システムです。監視カメラの映像から特定の人物の顔を自動的に検出して、リアルタイムに通知することができます。映像から特定の人物を検索することも可能です。

検出したい人物の顔をあらかじめ登録しておく、ということでしょうか。

そうです。空港で犯罪者の渡航を防ぐなど、主にセキュリティ分野で活用されています。これを使えば、今まで人の手に頼っていた警備の負担をぐっと減らすことができます。

顔認証システムといえば、先日「KPAS」の話もうかがいました。KPASは顔認証によってオフィスの入退室管理を自動化するシステムでしたよね。

どちらも「顔認証システムを使用している」という点では一緒ですが、大きく異なるポイントは「意識して顔を撮影しているか」というところです。KPASは入退室のために、カメラの方を向いて自分の顔を写し、照合しますよね。一方、FacePROが用いるのは監視カメラの映像です。井上さん、今日この会議室に入るまで、ビルのどこに監視カメラがあるか気がつきました?

いや、全く……。言われてみれば、普段の生活でいちいち監視カメラのことを気にしていないですね。

そうでしょう? 監視カメラで撮影される側はカメラがどこにあるか意識していません。そのため、正面から顔を撮影できるとは限らない。これがKPASで用いる顔認証との大きな違いですね。

なるほど、監視カメラにカメラ目線で写る人っていないですもんね。

そうですね。私はFacePROに携わってから監視カメラをすぐ見つけるようになってしまったので、あちこちのカメラと目があっていると思いますが……。

職業病ですね……。でも、「正面の顔が撮影できない」となると、登録された顔と照合するのが難しくなりませんか?

まさにそこが従来の顔認証システムの課題でした。この課題を解決したのがディープラーニングの技術です。顔認証において「世界最高水準」【※1】の精度を誇っていて、カメラに対して斜めを向いた顔でも、サングラスやマスクで隠れた顔でも検知できるようになりました。※1:NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の評価による。

無意識に撮影された顔だからこそ、ディープラーニングによる顔認証に意味があるんですね!

10年ほどの経年変化にも耐えうるので、昔の顔写真を登録しても検出できますよ。余談ですが、弊社の50歳代の社員がダメ元で7歳のときの写真を登録してみたら、なんとしっかり照合されたんです。

10年どころじゃないじゃないですか!

もちろん本来の使い方ではないですよ。あくまで笑い話としてお伝えしておきます(笑)

監視カメラ自体が「ベストショット」を選ぶ

監視カメラに写った顔を検知する、というお話でしたが、カメラに写っているのは一人だけとは限らないですよね。駅の監視カメラなどは、何人もが行き交う雑踏を撮影しています。そこで、全ての顔を検知して、一つひとつ認証するのも大変じゃないですか?

いい質問ですね! これはちょっと自慢になってしまうんですが、よろしいですか。

今日は思う存分自慢していただいて大丈夫ですよ。

一般的な顔認証システムは、カメラで撮影した映像をサーバーに送り、サーバー内で映像から顔を切り出します。ところがFacePROで用いる監視カメラ【※2】は、カメラの中で顔を検知して切り出すことができるんです。 ※2:パナソニック製ネットワークカメラ「i-PRO EXTREMEシリーズ」

え! ただ映像を撮るだけじゃないんですか?

もちろん、撮影した動画は記録器に保存します。それとは別に、カメラが映像の中の顔を検知して、顔の部分を切り出し、顔の情報だけをサーバーに送るんです。さらに賢いのは……これも自慢になりますが……。

大丈夫ですから!

監視カメラの前を人が通過するとします。その人がカメラの前から消えるまで、何度も顔が検出されるわけですが、同じ人の顔を何枚もサーバーに送っても意味がないでしょう?

サーバーも「これさっき見た顔!」「これも!」「これも!」と、余計な処理が増えてしまいますね。

なかにはブレたり、目をつぶったりした顔もある。こうして話しているあいだ、僕もカメラマンさんに何枚も写真を撮られていますが、変な顔になっている瞬間が絶対あります(笑)。

何枚も撮っていますからね。あの、あとできちんと写りの良い写真を選びますので……。

それです! FacePROの監視カメラも同じことができるんですよ。同一人物の顔から、特に写りの良い顔認証に最も適した数枚だけを厳選して、サーバーに送ります。これが「ベストショット」機能です。

そこまでできるんですか!

カメラがこの「ベストショット」機能を持つおかげで、サーバー側の仕事がぐっと減ります。その恩恵として、1台のサーバーにより多くの監視カメラをつなげられるようになりました。従来の製品ではサーバ1台に2、3台の監視カメラが限界でしたが、FacePROでは最大20台まで接続可能です。

カメラが手分けして、サーバーの仕事をするようになったんですね。サーバーを増やす必要がないのは、コスト面でもメリットがあるんじゃないですか?

そうですね。一般的に、セキュリティは安全性とコストがトレードオフの関係にあります。安全性を追求しすぎるとコストが馬鹿にならない。かといってコストを優先すると安全性を犠牲にしてしまう。FacePROは安全性を高めつつ、設備投資や人件費の削減につながるソリューションになったと自負しています。

防犯だけでなく、スタジアムや高齢者施設での活用も

FacePROはセキュリティ分野で活用されているとうかがいましたが、どんなところに導入されているか詳しく教えていただけますか。

国内で多い事例は小売業のお客様ですね。万引き対策に導入されています。大型小売店ともなると、相手はプロの窃盗団ということもあります。白昼堂々、商品が入った段ボールをカートに乗せて店を出て行ったりするそうなんです。

「万引き」と聞いて思っていたイメージと違います。被害額も大きそうですね……。

でも、最初に被害を受けたときに監視カメラが犯人の顔を捉えていれば……?

そうか、また犯人が店に来たらFacePROで検出できますね!

小売店以外にも、空港やスタジアムなど、不特定多数の人が集まる施設からもお声がけいただいています。あとは高齢者施設での導入事例もありますね。

高齢者施設ですか? あまり犯罪者が侵入するイメージはないですが……。

「侵入」と逆なんです。職員に無断で外出してしまう入居者の方がいらっしゃるんですよ。一度外に出てしまうと探すのが大変ですし、かといって出入り口を24時間見張るわけにも行かない。そこでFacePROに入居者の方だけを登録して、ドア付近で顔が検出されたら職員に伝わるようにしています。

そうか、防犯以外の用途にも使えるんですね。

他にもスポーツスタジアムなどの大型施設では「年間パスを持っている人を顔パスで入場させる」というKPASのような使い方もできますし、監視カメラの映像から迷子を捜索することも可能です。国内のみならず、海外での導入事例もかなり増えていますね。

「デモでは、サングラスをかけて踊っています」

いま海外の話が出ましたが、関口さんはFacePROのプロモーションのために、国内外の展示会によく登壇されていると聞きました。

そうですね。これがそのときの写真です。

ファッションショーの写真の間違いでは?

いえいえ(笑)、FacePROのデモのためにサングラスをかけているんですよ。これはタイで行われたパナソニックの新製品発表会のときですね。スパイ映画のテーマ曲に合わせて登場しまして……。

ノリノリじゃないですか!(笑)

「スパイのみなさんもFacePROの前ではすぐにバレますよ」と。

確かにサングラスをかけても顔認証ができるとは言ってましたが……。

このあとがダンスショーでしたね。サングラスをしたハリウッドセレブ役の人と、マスクをした医者役の人が音楽に合わせて踊って、そこをFacePROで撮影するんです。カメラに向けてバーン!と決め顔をすると、画面に顔がポーン!と出る。別の回では、プレスリーの格好をして歌いました。

あの……これは全て関口さんの発案なんですか?

いえいえ、タイの現地メンバーのアイデアです。僕はもう操り人形ですよ(苦笑)。でも不思議なもので、発表会を見ているみなさんはスパイとプレスリーが同一人物だって気がつかないんですね。FacePROでポーン!と顔が照合されたのを見て、「さっきのスパイが!?」って驚いていましたから。

FacePROは冷静ですね、プレスリーのインパクトに全く動じない(笑)。サングラスでデモをするのは、やはり分かりやすいからでしょうか?

そうですね。プレスリーとサングラスはあくまで手段であって、目的は製品を理解していただくことです。日々頭を悩ませながら伝えかたを工夫しています。展示会が終わると反省会を開いて、客観的なフィードバックを得るようにしているんですよ。

スパイもプレスリーも、「伝えかた」を工夫した結果なんですね。

▲展示会で行った、プレスリーをイメージしたバンドパフォーマンスの様子。

相手の目線に立つことは常に心がけています。たとえば、エンドユーザーは機能や使い勝手が気になりますが、機器の設置を請け負うインテグレーターは作業の難易度を重視します。相手によって訴求するポイントが異なるんですね。これは普段の生活でも同じ。上司へ報告や家族との会話でも、相手の目線を意識するようにしています。

これは今日の取材もそうですよね。ところどころ笑いも交えながらFacePROについてお話しいただいて……。

もちろん、真面目に話すこともあるんですよ。プレスリーみたいなものばかりではないですからね(笑)。

「顔以外」の情報も駆使して、より強固なソリューションを

今後も機能が加わるとのことですが、今後のFacePROについて教えていただけますか?

既に発表しているものですと、「未登録者検知機能」の追加を予定しています。これまでは登録した人物を検知する、いわば"ブラックリスト"の方式でした。本機能により、登録した人以外の人を検知する"ホワイトリスト"の方式にも対応します。「保護者以外の人物が、学校に子どもを迎えに来た」といったシチュエーションに効果的ですね。

なるほど、未知の犯罪者を検知できると。

でもこの機能、デモが難しいんですよ。登録した人がカメラの前に立っても警告が鳴らないので、「性能が悪くて顔がわからないのでは?」と思われる可能性があって……。いま非常に悩んでいるところです。サングラスばっかりだと飽きられちゃいますからね。

新機能が出るたびにデモを考える必要がありますから、見せかたも常に進化させなければいけませんね。

そうですね。進化といえば、顔認証システム自体もまだまだ進化の途中ですよ。顔はあくまで監視カメラから得られる情報の一つ。パナソニックの持つさまざまな画像認識技術を有機的につなぎあわせて、「安心・安全」を支えるソリューションをより強化していきたいと考えています。