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撮影からコンテンツ管理、配信までをエコシステム化。映像業務のテレワークを実現する「Media Bridge」

パナソニック社員を招いて、ソリューションについて聞いてみる連載コラム。今回のテーマは「Media Bridge(メディアブリッジ)」です。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人々が働く環境も大きく変化しています。テレワークが浸透し、自宅からオンライン会議に参加するのも珍しいことではなくなりました。

ただ、まだまだ現場での作業を余儀なくされている業界もあります。たとえば、テレビ局。撮影現場ではカメラマンやディレクターなどのスタッフが忙しく動き回り、編集や配信にも人手がかかるのが現状です。

そんな撮影現場の効率化、省人化を実現するのが、8月にリリースされたパナソニックの「Media Bridge」。撮影中に映像をクラウド上に自動転送、統合管理しながら編集や配信といった次の業務への橋渡しを実現するクラウドソリューションです。撮影機材の管理・監視やストリーミング配信の制御にも対応し、クラウドを介したリモート作業により、現場の煩雑な作業を自動化します。

放送業界のみならず、教育分野(リモート授業)やイベント業界(ライブ配信)など、幅広い応用が考えられる「Media Bridge」は、どんなポテンシャルを秘めているのでしょうか。メディアエンターテインメント事業部 AVソリューション課の藤村崇志に話を聞きました。

(聞き手:井上マサキ)

写真:担当者

藤村崇志

メディアエンターテインメント事業部 AVソリューション課
1997年の入社以来、放送業界向けソリューションを中心に携わる。Media Bridgeには企画段階から携わり、プロジェクトリーダーとして開発にあたる。

撮影中にクラウドへファイルを自動転送。遠隔操作でストリーミング配信も

今日はよろしくお願いします。……あれ、後ろにあるホワイトボードの絵って、藤村さんが描かれたんですか?

何も描いてなかったら寂しいかなと思いまして。Media Bridgeの構成図ですね。走り書きで申し訳ないのですが。

▲取材当日、藤村が会議室のホワイトボードに描いたMedia Bridgeの概念図

いえいえ、お気づかいありがとうございます。さっそく、Media Bridgeとはどんな製品なのか教えていただけますか?

一言でいうなら「撮影とお客様の業務をつなぐソフトウェア」です。撮るという業務がある市場ではどこでも共通するのですが、たとえば放送市場、ニュース番組で使われている映像は、現地で撮影した映像を、テレビ局で編集して放送しないといけませんよね?

「住宅街にサル出現!」みたいなテロップを入れたりしますもんね。

その場合、現地で収録した動画ファイルを撮影チームがテレビ局に持ち帰って、そこでようやく編集作業に着手できます。Media Bridgeを使えば、カメラから映像をクラウドにアップロードして、局ではその映像で編集に着手できるようになるんです。撮影クルーがテレビ局に帰ったころにはもう編集が終わっている。撮影者が、撮影中の映像をスマホで確認することもできます。

なるほど、クラウドですか。でもそれって、撮影が終わったカメラマンが自分でクラウドにファイルをアップロードすれば済むのでは? 世の中にはクラウドサービスはいろいろありますし……。

Media Bridgeに対応したカメラを使えば、転送用の機械などもっていかなくても、撮影中にカメラからクラウドへ、ファイルを自動でどんどん転送していけるんですよ。撮影と転送を同時に行うので、撮影が終わるころにはほとんどのファイルはすでにクラウド上で、局ではすでに編集に取り掛かっている状態です。会社に帰ったころにはもう終わっているかもしれません。

自動で!? じゃあ撮影が終わったら、もうカメラマンさんはお家に帰っていいんですか。

帰っていいです。

話が早い……!

もちろんクラウドにファイルがアップされるだけでは使いにくいですから、Media Bridgeはコンテンツ管理の機能も備えています。撮影したファイルには「いつどこで誰が撮ったか」という情報などから自動で分類管理され、必要なものを簡単に見つけられます。「うちの課の人間だけ見れる」といったアクセス権の付与も可能です。ちなみにiPhone用撮影ソフトも出していますので、カメラを持参せずとも、現場視察や打ち合わせの映像などを同時に管理可能です。

なるほど、ただクラウドにファイルを転送するだけじゃなくて、映像コンテンツ周りの作業にも考慮しているんですね。

▲藤村による概念図は、画面左側奥のホワイトボードに描かれたもの

動画の管理は面倒ですからね……。あともうひとつ大きな特徴があって、クラウドから「撮影機材の状態管理」もできるんです。遠隔地にあったらカメラがそれぞれどこにあるのかもわからないですし、動いているのかもわからないので、機器の状態が気になりますよね。Media Bridgeは接続された全てのカメラの位置情報やバッテリー状態、操作状況などを一覧で見ることでき、ストリーミングの配信などの操作もそのままリモートで行えます。

リモートで……ということは、現場にカメラだけ置いておいて、遠隔操作で「配信スタート!」とするのも?

できます。たとえば接続機器のストリーミング配信先は一元管理制御ができるので、リモートで「このカメラでYouTube Liveに配信開始」「このカメラはFacebook Liveへ配信開始」といった操作もできますよ。それらを管理側ですべて行うので、カメラを持っている撮影は細かい設定を意識せず、撮影に集中すればいい。

現場に誰もいなくても配信できてしまうんですね!

さらに……。

まだあるんですか!?

2020年度末にはストリーミングの収録にも対応しますので、「ライブのストリーミング配信と同時にVOD用に収録する」といったこともできるようになる予定です。ファイルとストリーミングを両方同時に取り扱えるのは、Media Bridgeだけの強みですね。

「結婚式のエンドロール」「大学のリモート授業」放送以外の使い道も

撮影した映像がクラウドにアップできて、それを編集できて、機材も遠隔操作できるし、ストリーミング配信までできるし……。機能が盛りだくさんで、なんだか放送以外にもいろいろなことができそうな気がしますね。

▲取材はHDコムを利用してリモートで行いました

そうなんですよ。展示会では、お客様から思いもよらぬ使い道を聞くこともありました。たとえば結婚式の最後に、その日の式の映像がエンドロールと一緒に流れるのを見たことはありませんか?

あります! 「撮って出しエンドロール」というやつですね。初めて見たとき「さっきスベってた余興の映像だ!」ってビックリしました。

あれは撮影した映像をその場ですぐ編集して作成するのですが、制作会社さんによると、エンドロールを作るには「カメラマン・編集担当・アシスタント」の3人が現地にスタンバイする必要があるんだそうです。それが沖縄や北海道などのリゾートウェディングだと、交通費もかなりかかるみたいで。

なるほど、そこでMedia Bridgeを使えば……。

撮影と同時にファイルがクラウドに自動転送されるので、アシスタントが編集担当に撮影データを運ぶ作業がなくなりますし、編集担当もいつものオフィスにいればよく、撮影と同時進行で編集もできる。現地にはカメラマンだけ行けばよくなるんです。

編集担当とアシスタントの「俺たちも沖縄に行きたい!」という声が聞こえるようですが、会社としては一気に効率化できますね。他に、放送以外の用途にはどんなものがあるんですか?

やはりコロナ禍ということもあって、教育現場の需要が高まっています。教室と生徒の自宅で同時に授業をしたい、ついでに収録した動画を後から自宅から視聴できるようにしたい、と。なんなら「先生も自宅から授業したい」といった用途でも問題ありません。それにパナソニックのリモートカメラなら、講師の動きを自動追尾するシステムもありますので……。

リモートカメラの自動追尾システム、以前このシリーズでもお話をうかがいました! 2万枚の「学校の先生の写真」を使ってAIを学習したという。

▲「AIに約2万枚の先生の写真を見せて姿を覚えさせた」話の詳細は、連載コラム「自動追尾システム」編から

この記事でお話している櫻井は、Media Bridgeの設計課長でもあるんですよ。自動追尾システムと連携させれば、教室に撮影用のスタッフがいなくても、自動でMedia Bridgeに授業動画が蓄積できるわけです。

ストリーミング配信を使って、ライブで授業を流すのもいいでしょうね。

もうひとつ、教育現場のニーズに合致しているのは、Media Bridgeがソフトウェアとして提供されていること。SaaSのようなサービス提供型ではないため、カスタマイズも可能ですし、顧客環境内に組み込むことができるんですね。特に教育関連はセキュリティに厳しいんですよ。生徒情報と連動してログイン管理をするなどシステム連携ができるなど、顧客のシステム内に組み込めるのはセキュリティの面で大きなメリットです。

確かに。システム外部からのアクセスを許可したら、悪意を持つ人が入ってくる可能性がありますしね。

そもそもMedia Bridgeを開発したきっかけも、企業だけでなく教育現場からの要望があったからでした。一昨年、中国の大手配信会社方から、企業・教育向け映像配信システムを共同でやらないかとの要望を受けまして、もともと放送用に展開していた「P2Cast」という製品をベースに開発したものです。

「YouTubeと何が違うの?」と聞かれ……リリース後も続く「説明」の日々

その「P2Cast」という製品も、クラウドを使ったソリューションだったんですか?

そうですね。放送市場用でしたが、いいリファレンス(参照元)となっています。足らなかった機能、問題点を参考にし、対応市場を広げ発展させたのがMedia Bridge、という感じですね。ストリーミング対応やパナソニックの放送用機材以外の対応から始まり、SaaSの形で提供していたのでセキュリティの懸念があったのを、顧客環境のAWS上などでも構築できるようにしています。そのうえオンプレミスも可能にするなど、全く新しいコンセプトとして作り上げました。

藤村さんはプロジェクトリーダーだったんですよね。Media Bridgeの開発では、何が一番大変だったんですか?

もちろん開発も大変でしたが、企画段階で「Media Bridgeの考え方や価値」をどう理解してもらうか、苦労した記憶があります。

というのは……?

Media Bridgeはとにかくたくさんの機能をもっています。それを組み合わせて、市場ごと、顧客ごとにあう構成にすることで、はじめて完成するんです。「お客様に合わせて完成させる」ということは、システムのみができあがっても、サービスとしてはまだ完成していない、ということじゃないですか。

システムにたくさんの機能を設けて、「これだけ機能をそろえたから、自分にあわせて好きなものを使って!」ということですね。それをお客さんが自分に合わせて使うことで、ようやく価値が生まれる、と。

企画段階では、そんなサービスの話をするんですよ。これが理解されない。一つひとつの機能で見てしまうと、「他社もあるのでは?」「なにがいいのか?」となるわけです。他にも、言葉の壁も多かった。「クラウド」の定義が難しいんです。

「クラウドとは?」から説明しないといけないパターンですね……。

「クラウドで動画を保存して管理します」というと、「YouTubeとなにが違うのか?」「タダで使えるサービスがあるのに、これは商売になるのか?」となるんですよね。「YouTubeにあげる前の制作作業用です」とか「顧客環境に置くからセキュリティも守れます」という話を幾度となくやったので、自分のなかに「こう聞かれたらこう返す」という辞書ができました。

同じような内容を繰り返し聞かれ、同じような内容を説明して……。短気な人だったら「言ったじゃん!」ってなっちゃいそうですが。

▲Media Bridgeカタログに載せられている、システム概念図。藤村による図と比較すると、ほぼ同様の内容が両者でまとめられていることがわかる

企画が通ったあとも、決済を取るために、開発メンバー、営業に、リリース後の今も販売担当の方々とともに各市場顧客用のフロー書き、顧客へ説明しながら、今の業務ならこのパターンがいいだろう……といった提案もしているので、この概念図を描くのが習慣になってしまいました。

繰り返し説明してきたから、その絵もスラスラ描けちゃうんですよね。

入社以来ずっと放送用の機材に携わってきたので、その蓄積が今生きていますね。放送用のシステムやイベント配信の仕組みなどが頭に入っているので、そのシステムならMedia Bridgeをこう接続して、編集ソフトとこう連携して……というのがだいたいわかるんです。これを説明して理解していただくにはやはり絵をかかないと難しいんです。

まさにリーダーになるべくしてなった、という知識量ですね……。ちなみに、技術的な面ではどんな苦労があったのでしょうか。

Media Bridgeは他社のカメラも使用できるのですが、パナソニック製のカメラなら自動転送などの、より便利な機能が複数使えます。ここが大きな強みとなる部分です。この機能はカメラ側にも仕組みが必要なので、クラウド側担当者とカメラの機種担当の方とは何度も会話を重ねました。

そこでもまた説明が……。

しかし技術者同士なので話は早かったですよ。あと、開発がちょうどコロナ禍に重なってしまって、そこも大変でした。ものがありますので、セキュリティ上、会社に来ないと開発できない。週3日の出社で開発が回るようにシフトを組んで対応して。

ハードの開発まであると、なかなか全てをリモートで済ませるというわけにいかないですしね。

でも、悪いことばかりでもなかったんです。コロナ禍で「遠隔でオペレーションをしたい」という需要が増えて、社内でもいろいろなアイデアが出ました。次回のバージョンアップでは、その辺りも機能も含めようとしているんですよ。

俳優もカメラマンもディレクターも家にいる「未来の撮影現場」

このご時世ですから「リモートで撮影したい」という現場はたくさんあるでしょうね。だからスタートとストップをリモートで行えたり、現場に誰もいなくてもストリーミング配信ができたりするわけですか。

そこまではもともと昨年から予定していた機能なんですよ。作業の効率化を目的にしていただけで、コロナ禍など全く想定していませんでした。昨今の状況を受けて、さらにリモート関連の機能を充実させることにしたんです。

たまたまコンセプトがハマったんですね。現状でもだいぶ便利に使えそうですが、これ以上どんな機能を……?

Media Bridge単体でというわけではなく、Media Bridgeを含むKAIROS(※/ケイロス)プロジェクトの一部としてとなりますが、たとえば複数のカメラの映像を切り替える、「スイッチング」。通常音楽ライブ現場などでは何台かカメラを置いて映像を切り替えるものですが、最近では配信がメジャーになっていますよね。ライブスイッチングをクラウド上で行い、ついでにリモートカメラのパンやティルト(水平・垂直方向への回転)も制御できるようになれば、現場には物を置くだけで、リモートオペレーションが簡単に実現できます。
※ Panasonicによる、独自のソフトウエアを活用したライブ映像制作プラットフォーム。(https://panasonic.biz/cns/sav/products/it_ip_platform/

現地にカメラを送って「Media Bridgeにさえつなげてもらったら、あとはクラウド上から全部やります」と。

▲発表時点でのMedia Bridgeの管理画面。左側が保存された映像で、右画面で再生する仕組み

技術的ハードルは高いですが、実現させたいですね。現在は全世界でそういった需要が高まっているんですよ。ライブ会場に機材をおくって、スタッフは複数拠点を遠隔から制御配信するとか。俳優もスタッフも家から出られないので、みんなの自宅から番組をつくる。俳優の家にカメラを送って設置してもらい、技術スタッフが家からカメラを操作して、ディレクターが家から指示を出す、とか。

カメラの周りに誰もいないけど、撮影は進んでいる……。未来の撮影現場ですね。

今でも、やろうと思えば似たようなことはできるんです。でも我々はもっと簡単に、「置いたら全部できます」「プロがいなくても、学校の先生やITに強くない人でもすぐにできます」という状態を目指しています。

そうなると、まだまだ説明の日々が続きそうですが……。

そうですね(笑)。おかげさまで、8月のリリースから複数問い合わせをいただきまして、各種業界のお客様と会話をしています。放送関連については説明に慣れていますが、教育など他の業界については私も知らないことが多いので、日々キャッチアップをしているところです。

幅広い用途に使えるソリューションでしょうから、いろんな業界に詳しくなりそうです。

「その課題にはこう対応できます」と提案するには、やはりお客様理解は欠かせませんから。Media Bridgeはお客様環境で、お客様のために作るもの。連携できるシステムを見極めながら、最適な形でお客様の環境を作り上げられたらと思っています。今後も、メディアエンターテインメント事業部として進めるKAIROSワールドの基幹商材の一つとして、より多くのソリューションに対応できるよう進化させていく予定です。