社内の試行錯誤が、働き方改革のモデルケースに。管理部門向けサブスクリプション型 Let's noteの働き方改革支援サービス

パナソニック社員を招いて、ソリューションについて聞いてみる連載コラム。今回のテーマは、「サブスクリプション型 Let's noteの働き方改革支援サービス」です。

働き方の多様化が進み、企業は従業員それぞれのライフスタイルに合わせた働く環境づくりが求められています。そんな時にオフィス環境の整備や資材の管理を担うのは、情報システム部門や人事部門などの「管理部門」。PCのライフサイクルマネジメントや、テレワーク環境の構築、セキュリティの担保など、働き方改革の裏で増え続ける管理部門の負荷も無視できません。

今回ご紹介する「スリムワークサポート」は、パナソニックのノートPC「レッツノート」と働き方改革支援ソフトウェアをパッケージ化し、サブスクリプション(定額制)で利用できるサービスです。管理部門の負荷を軽減しながら、働き方改革を後押しするソリューションが含まれています。

実はパナソニックでも、モバイルワークや在宅勤務などの実現のために、さまざまなソフトウェアを自社で開発・導入していた歴史があります。スリムワークサポートに含まれているのも、実際にパナソニック社内での活用実績があるソフトウェア群。これらの改革は、まさに「管理部門」が中心となって進められてきました。

働き方改革を進めるにあたって、いかに高いセキュリティレベルを保ち、社員が働きやすい環境を作ってきたのか。また、その成果はどのようにスリムワークサポートに活かされているのか。パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社 経営革新部(社内情報システム部門)の藤井宏之に話を聞きました。

(聞き手:井上マサキ)

写真:担当者

藤井 宏之

パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社 経営革新部
1996年入社。一貫して社内情報システムを担当し、システムの企画・開発からITインフラの構築・運用まで幅広く経験。現在は、働き方改革の推進、ICTの戦略立案、ITセキュリティ、DXを担当。

「かつて、在宅勤務の申請には自宅の間取り図が必要でした」

今回のテーマである「スリムワークサポート」は、レッツノートと働き方改革支援ソフトウェアがセットになったものと聞きました。具体的にはどのようなソフトウェアが含まれるのでしょうか?

管理部門の負担軽減を目的としたものが中心となります。資産管理や保証といったPCライフサイクルマネジメントや、PC紛失時のデータ消去、テレワーク支援などを目的としたものですね。

確かに「働き方改革」はホットな話題ですが、これだけのサービスを一度に開発するのって大変だったんじゃないですか?

いえ、これらの多くは、もともと社内で使うために作られたものなんです。働き方改革を進めるなかで導入してきたソリューションをお客様に紹介した際、「ぜひ、私たちにも使わせてほしい」と要望をいただきました。そこからパッケージとして外向けに販売していまして。

それって、いつごろから始まった話なんでしょうか。

最初は2014年、まだ「働き方改革」という言葉が一般的になる前ですね。当時は社内の8割がデスクトップPCで、持ち出せるノートPCはシンクライアント(※1)しか認められていませんでした。ですから、テレワークとして在宅勤務するのもなかなか難しい状況で。

※1 シンクライアント(Thin Client):ユーザが使うクライアント端末(PC)の機能を最小限にし、アプリケーションの実行などをサーバ側で行う仕組みのこと。端末側にデータが一切残らないので、情報漏洩対策として用いられる。

在宅勤務の制度自体はあったんですか?

あったことはあったのですが、パナソニックは情報セキュリティのルールが非常に厳しく、当時は在宅勤務の申請に「自宅の間取り図」の提出が必要だったんですよ。

なぜ在宅勤務のために間取り図を……!?

「家族にも社内の情報が漏れないよう、個室で作業ができることを確認するため」と聞いています。配偶者が同業他社に勤めているケースも考慮しないといけないので……。

厳しい……。個室が用意できない人は、人気のない河川敷まで行って、背後に気をつけながら仕事するしかないですね。

そこまでは(笑)。ノートPCを持ち出すのは難しいにせよ、せめて移動時間に会社のメールを見たり、ワークフローを承認したりできる仕組みがほしいじゃないですか。そこで、セキュアなモバイル環境として導入したのが「CACHATTO(カチャット)」でした。

モバイルワーク、セキュリティ……次々現れる働き方改革の課題

「CACHATTO」シリーズは、今のスリムワークサポートにも「CACHATTO Desktop」「まるで社内」として含まれていますね。

そうですね。我々のモバイルワークは、まさに「CACHATTO」から発展させていったんです。同時に、会社と従業員の双方にメリットをもたらすBYOD(※2)を進めたのも大きかったですね。

※2 BYOD:個人所有のスマートフォンやPCを業務に利用すること。「Bring Your Own Device」の略。

社用のスマホを配布するのではなく、「自分のスマホを使ってね」としたのはなぜでしょう?

会社としては、社用スマホを配布するのはコストもかかるし、情報漏洩などのセキュリティリスクも高まります。一方、社員としては社用と私用スマホの2台持ちは面倒だし、紛失するリスクを負いたくない。だったら、各自で普段から持ち歩いているスマホを使ってもらおうと。

しかし、自分のスマホを使ったとしても、落としたら情報が漏れちゃうんじゃないですか?

CACHATTOは端末にデータを一切残さない仕組みになっているんです。当時は社用のガラケーを配布していたので、あくまで希望者のみにBYODをお願いしました。「今後は社用ガラケーにCACHATTOを入れて、メールやスケジュールを見てください。また希望される方は、CACHATTOを個人のスマホに入れてもいいですよ」という具合ですね。自分のスマホを使ったほうが便利だし、端末にデータが一切残らないので、落としても情報セキュリティ事故にならないということが社内でも受け入れられて、1年後には7割の社員が導入しましたね。

納得したうえで使ってもらったわけですね。これで外出先からも働けるモバイルワーク環境ができましたが、在宅勤務といった完全なテレワーク環境を作るには、やっぱりノートPCが必要ですよね?

そうですね。セキュリティを担保しつつPCを持ち出すのであれば、シンクライアント端末で良いのですが、1台あたりのコストが高く、全員に配るわけにはいかなかったんです。

さすがに「ノートPCも個人のものを使ってください」というわけにはいかないですもんね。

お客様から求められるセキュリティレベルは高いままですからね。他には、持ち出しPCとしてレッツノートを導入して、ハードディスクの暗号化を施せばいいのでは、とも検討しました。「仮にPCを紛失してもその中身に鍵をかけておけば大丈夫」という考え方なのですが、暗号化は、今は大丈夫でも、今後技術が進化したら暗号解読されてしまうかもしれないリスクがあるので、それだけでは心配でした。

ずいぶん気の長いハッカーだなという感じですが、気持ちもわかります。解読にいくらでも時間がかけられるので、何度もパスワードを入れて試したりするでしょうし……。

そこなんです! だったら、BIOSのパスワードを何度か間違えたら自動的にハードディスクを消去すればいいじゃないかと。

そんな仕組み作れるんですか!?

レッツノートは、日本で唯一BIOS(※3)を自社開発しているので、BIOSからハードディスクを消去させることも可能でした。こうして2017年に生まれたのが、「自己防衛PC(TRUSTDELETE Biz)(※4)」です。同時期に在宅勤務のガイドラインも改訂されて、テレワークが一気に加速しました。

※3 BIOS:PCの電源を入れたとき、最初に起動する基本プログラム。WindowsなどのOSの読み込みや、PCに接続された装置の入出力制御を行う。
※4 TRUSTDELETE Biz:盗難・紛失したパソコンやタブレットのデータを、リモート消去、若しくはローカル消去することができるワンビ株式会社のアプリケーション。

なるほど……。「外出先でメールを見たい」「テレワークのためにPCを持ち出したい」という要望に対して、セキュリティリスクを回避しながら、一つひとつソリューションを導入していったと。そしてようやく、今のスリムワークサポートに……。

ところが、これで終わりではなくて……。

まだなにかあるんですか?

ノートPCを持ち出して、外で仕事ができるようになると、今度は「長時間労働」が問題になるんですよ。

自身が「働き方改革&システム導入のモデルケース」に

なるほど……。ノートPCを持ち出せたら、夜間でも休日でも、家で仕事ができちゃいますからね。じゃあ、これも自己防衛PCみたいに「夜中まで仕事してたらシャットダウン!」みたいな機能を……。

それも考えたんですが、さすがにシャットダウンは乱暴かなと(笑)

そうですよね。出過ぎた真似をしてしまいました。

あくまで緩やかに「ダメだよ」と牽制しつつ、それでも必要なのであれば上司に申請すれば残業できるようにしたかったんです。そこで、土日祝日は終日、平日は20時を過ぎると画面いっぱいにポップアップが出る仕組みにしました。こちらが表示される「働き方かえるくん」です。

※ ポップアップ以外の画面にはモザイクをかけています

めちゃくちゃかわいいですね……!

季節によってクリスマスバージョンやお正月バージョンもあります。

見たい! でも20時まで働かないと見られない……!

社員に受け入れてもらえるよう、柔らかく伝えたかったんです。本人も好きで残業しているわけではないですし、やはり「残業をするな!」というメッセージは強すぎるので……。

そういうところにも気を配らないといけないんですね。

はい。情報システム部門って、社内システムや情報セキュリティで、社員をガチガチに縛ろうとするイメージがあるじゃないですか。それを払拭したくて。こうして「CACHATTO」「自己防衛PC」「働き方かえるくん」が社内で運用されるようになり、これは社外でも売れるだろうと、パッケージとして外販することになりました。

あれ、カタログを見ると「働き方かえるくん」は「Chronowis(クロノウィズ)」という名前に変わってますね。これは外向けを意識してシュッとした名前に……?

「Chronowis(クロノウィズ)」ポップアップ
※ ポップアップ以外の画面にはモザイクをかけています

それもありますが、「働き方かえるくん」は既に商標が取られていまして……。

同じことを考える人がいたんですね……。他にも、外販にあたって変更した部分はありますか?

パナソニック社内での利用のみを想定した作りだったので、システムに汎用性を持たせるのと、品質を担保したことです。改めてQMS(品質管理システム)を介してシステムの品質チェックなどを行いました。

実際に社内で運用した実績がありますから、お客様への説得力も違うでしょうね。

製品についてはもちろんですが、「どうやって働き方改革を推進したのか」とよくご相談いただきますね。投資対効果やセキュリティ面を懸念する上層部をいかに説得するか、頭を悩ませている方が多いんです。私も営業に同行して、お悩みごとを聞いたり、どのような体制で進めたかをご説明したりしています。

まさに今聞いた内容ですね。自分自身がモデルケースになっていると。

あと、外販のメリットとしては、お客様から要望を受けられること。社内では気づかなかった改善点を指摘していただけます。機能追加した製品は再びパナソニック内でも運用するので、我々も恩恵を受けられるんです。外販によってブラッシュアップしていけるのは、嬉しいことですね。まさに、Win-Winの関係です。

「社員は使いたいだろうか?」情シスとユーザー目線のせめぎ合い

改めて「スリムワークサポート」の話を聞かせてください。パナソニックのレッツノートと、先ほどうかがったような働き方改革支援ソフトウェアがセットになっているサポートプラン、ということですね。しかもサブスクリプション(月額制)で。

そうですね。目的別に5種類のサービスパックとオプションサービスをご提供しています。先ほどお話ししていない範囲だと、導入時のPCキッティングや資産管理を含む「PCLM(PCライフサイクルマネジメント)」も行っています。そもそもパナソニックはグループ全体で10万台以上のPCを管理しているので、ライフサイクルマネジメントにも強みがあるんです。

10万台以上! ちょっとした地方自治体の人口くらいありますね……。ちなみに、サブスクリプションにしたことで、何か反響はありましたか。

前にお話した情報システム部門の方は、「導入の手続が1回で済む」ことに着目されていました。通常はパソコンを購入して、リース会社を選んで、パッケージの稟議を通して……と社内手続が煩雑になるそうなんです。スリムワークサポートは必要なものがパックになっているので、ワンストップで手続を済ませられます。

そんなメリットもあるんですね。今後はサービスを増やしていく予定などあるんでしょうか。

はい。大きなものとしては、在席確認の仕組みを検討中です。最近、オフィスがフリーアドレス制になったことで、「誰が、どこにいるか分からなくて困っている」という声を多く耳にします。また、今後はオリンピックに向けて、首都圏は出社が難しくなりますので、サテライトオフィスを持つ会社も増えてきますよね。

そうやって皆がそれぞれの場所で働くようになると、誰がどこにいるのか、本当にわからなくなるんですよ。そこで、社内のどの無線のLANのアクセスポイントにPCがつながっているか特定し、その人がどのあたりにいるのかを見つける仕組みです。

お話をうかがっていると、スリムワークサポートのようなサービスの提供は、ユーザ目線で「これができたらいい」「これは面倒くさい」と思う部分と、情報システム部門として「これはやってほしい」「これは対応できない」と判断する部分、両方の視点から内容を考えなければいけない仕事ですよね。

そうですね。「これは社員に受け入れられるかどうか」という、ユーザ目線は常に忘れないようにしています。例えば「このアプリは個人情報を取得して個人情報を監視します」と言われたら、どんなに便利なものでも使いたくないじゃないですか。

せっかく導入しても、使ってもらわないと意味がありませんしね。

先ほどの「在宅勤務の申請に間取り図」じゃないですけど、かつてはセキュリティのハードルはかなり高いところにありましたよね。しかし今は、クラウドや暗号化などの技術進化や、世論の変化によって、セキュリティのとらえ方が徐々に変化していると感じます。時代に適したサービスを提供し続けるには、私たちの意識も共に変わっていかないといけませんね。