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秘湯マニアの温泉療法専門医が教える〜心と体に効く温泉  佐々

ビジネスの成功は心身の健康から。
心と体は深く結びつき、互いに支え合いながら、時に思いもよらないパワーを生み出します。
このコラムでは、しなやかな体と強い心を手に入れるためのオススメ本をご紹介します。今回はこちら…

負けないカラダ〜Toughnessを手に入れる本 第69回

秘湯マニアの温泉療法専門医が教える〜心と体に効く温泉
佐々木政一 著

中公新書ラクレ / 860円 税別

2019-1-21

現役の医師が日本全国の温泉を巡って選んだ秘湯・名湯を紹介。温泉の歴史や文化を紐解きながら、効能から賢い利用法までを解説。

温泉療法の専門医


著者の佐々木政一氏は消化器外科医で、日本温泉気候物理医学会・温泉療法専門医でもあります。学会で各地に出張するたびに温泉に立ち寄るうちに、すっかり温泉の魅力に取り憑かれたのだとか。

その後、本格的に温泉医学を勉強し、歴史や伝承、万葉歌など、温泉をとりまく文化の造詣も深めたそうです。

訪れた温泉は200箇所近く


佐々木氏がこれまでに訪れた温泉は海外も含めて217箇所。

第一章では、お気に入りベスト22が紹介されています。1位は乳頭温泉郷・鶴の湯温泉(秋田県)、2位は黒川温泉(熊本県)、3位は法師温泉「長寿館」(群馬県)。

北は北海道から南は大分まで登場します。ひとつ一つの温泉の歴史や魅力、ご自身の体験をもとにした楽しみ方のポイントなどがわかりやすくまとめられていて、著者が“温泉中毒”と語るのもうなずけます。

物理的効果、化学的効果、転地効果


個人的に気になったのは第二章、温泉の効能についての解説です。

温泉に行くと、そこに掲げられている泉質や適応症などの表示を眺めたりしますが、なかなかそれぞれの泉質の違いは覚えられないものです。

ここでは温泉が人体に与える効果・作用は主に3つに分けられると記してあります。物理的効果、化学的効果、転地効果です。

物理的効果は3つあります。

1)温熱作用
水道水に比べて体温を上げやすいことから、血行促進や新陳代謝の亢進、疲労物質の排泄の促進、自立神経への影響などがある。

2)静水圧作用
湯船に首まで浸かると、腹部で0.4〜0.5気圧の水圧がかかり、腹部は圧迫されて1〜2センチ程度細くなる。胸部でも同様のことが起こり、静脈から心臓への血流が増加して、心臓の働きが活発に。加えて、呼吸数が増加し、呼吸機能も促進される。

3)浮力作用
水中では体重は9分の1になる。この浮力作用を利用して、リハビリテーションも行われている。

化学的効果とは、水道水や井戸水にない特定の成分が皮膚から直接染みこんだり、飲泉による胃腸からの吸収によって、さまざまな薬理効果をもたらすことをいいます。

転地効果とは、自然豊かな温泉地に出かけることで、自律神経を整え、ホルモンの分泌を促し、日常のストレスが解消されることを意味しています。一般に温泉で転地効果を得るためには、日常から100キロ以上離れ、標高300〜800メートルの森林の多い高原地帯にある温泉地が最適とされています。

武将や文人が愛した温泉


さらに、2014年に新しく分類された10種類の温泉の泉質とその効能について、詳しい解説が続きます。(単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉)

ほかに、温泉の効果を無駄にしない正しく安全な入浴法や、日本の古湯、文学の舞台となった温泉、万葉集で詠まれた温泉、武将を支えた温泉なども登場します。

文献の上では奈良時代から記されてきた温泉は、江戸時代に入ると伊勢参りなどと絡めた旅の楽しみとして盛んになり、東西の「温泉番付」もつくられるようになりました。

日本文化と切っても切れない温泉。寒い時季、この本で温泉の効能や歴史について学びつつ、近場の温泉を訪れてはいかがでしょうか。

(編集部)