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「100年を生きる 心臓との付き合い方」 天野 篤 著

ビジネスの成功は心身の健康から。
心と体は深く結びつき、互いに支え合いながら、時に思いもよらないパワーを生み出します。
このコラムでは、しなやかな体と強い心を手に入れるためのオススメ本をご紹介します。今回はこちら…

負けないカラダ〜Toughnessを手に入れる本 第68回

「100年を生きる 心臓との付き合い方」
天野 篤 著

セブン&アイ出版 / 1,600円 税別

2018-12-25

天皇陛下執刀医が語る「人生100年時代」の心臓との付き合い方。

天皇陛下の執刀医として


これからは多くの人が「100年を生きる時代」といわれています。医療の進化によって、平均寿命もさらに伸びることが予想されます。

そんな時代にあって、私たちはどう心臓と付き合っていけばいいのか。2012年、天皇陛下の冠動脈バイパス手術に携わった外科医の天野篤氏が記したのが本書です。

日本の心臓手術の現状


従来の心臓手術は血管を人工心肺装置につなぎ、心臓を止めて行うのが一般的でした。この人工心肺装置は、医師の間で「ポンプ」と呼ばれています。天野氏が執刀するバイパス手術では、このポンプをオフにした手術「オフポンプ術」を選択するケースがほとんど。それにより患者さんの体の負担が軽減され、術後の回復も早くなるといいます。

日本はこのオフポンプ術の最先進国。高齢者の増加とともに、心臓を止めないと手術することができない弁膜症の患者さんが急速に増えていることから、現在は心臓手術のうちの5分の1くらいだそうですが、バイパス手術に限れば3分の2ほどがオフポンプ術だといいます。この数字は世界的にも高水準です。

「6つの危険信号」を見落とさない


第二章では、心臓病の予見について記されています。

心臓病は早期に対処を行えば、元どおりの生活を取り戻せる病気。大きな発作が起こる前には、心臓から「危険信号」が出ているケースがほとんどです。

典型的な初期症状は6つあります。

1)胸痛
2)動機や脈拍の異常
3)息切れや呼吸困難
4)むくみ
5)めまい
6)一時的な失神

なかでも注意が必要なのは、命の危険がある心筋梗塞や狭心症のサイン。典型的な症状として、激しい胸痛が起こります。普段とは違うなと思っているうちに意識を失って命を落とす場合もあるので、激しい痛みを感じたら救急車を呼ぶようにします。強い痛みととも吐き気やめまいを感じたり、冷や汗が出たりするケースもあり、ショック状態に陥りつつある危険な状態だそうです。

心臓病は65歳以上の高齢者が圧倒的に多い病気ですが、「若いから心臓病の心配はない」と思い込むのは禁物。生活習慣や体質なども要因します。両親や祖父母といった近い家族に心臓疾患で亡くなった人や心臓手術を受けた人がいる場合、とくに二人以上の突然死があるような場合は遺伝性の心臓疾患が濃厚だそうです。

ほかに悪玉コレステロール値や尿酸値のコントロール、虫歯や歯周病と心臓病との関係についても言及しています。

冬場は寒暖差がリスクに


第三章は、心臓を守る暮らしについて書かれています。 心筋梗塞や狭心症の発作は、早朝や夜間に起こりやすい傾向があります。目覚めた直後は交感神経が活発になり、血管が収縮して血液が流れにくくなり、血圧が急上昇します。また就寝中に体内の水分が失われ、血液が固まりやすい状態になっているからです。夜間はストレスやアルコール、気温の急激な低下などで心臓に負担がかかると考えられてます。 これからの寒い季節も、とくに注意が必要です。

寒くなると血液が上昇し、それにより血管にも大きな圧力がかかり傷つきやすくなります。その傷からLDLコレステロールが入り込んでプラークを形成し、動脈硬化を促進します。その状態で急激に血圧が上がると、心筋梗塞などの発作を起こして突然死を起こすリスクが高まります。

急激な温度変化も要注意です。寒い脱衣場から熱い湯につかるときには、浴室をシャワーで暖めておいたり、湯船に入る前にかけ湯をして一気に肩までお湯に入らないなどの対策をします。

年末の大掃除にも危険は潜んでいます。部屋の寒暖差、拭き掃除や洗車などで冷たい水に触れるなども心臓に負担がかかります。さらに、前かがみにしゃがみこむ姿勢は心臓が圧迫され、呼吸もしずらくなって血圧の変化が強く表れます。

また冬場は暖房によって知らず知らずに脱水になりがちなので、水分補給も意識して行うようにします。

ほかに今の心臓病治療についてや、お酒と心臓病、心臓を守る食事法、睡眠やインフルエンザ、花粉症と心臓病との関係、がんを抱える患者さんの心臓病治療など心臓にまつわる知識に加えて、手術支援ロボット「ダビンチ」の導入や外科医の減少など医療現場の現在と未来についても記されています。

年齢の上昇とともに高まる心臓病のリスク。家族や自分のための備えの知識をして、ぜひ読んでおきたい一冊です。

(編集部)