コラム | COLUMN

ビジネスの成功は心身の健康から。
心と体は深く結びつき、互いに支え合いながら、時に思いもよらないパワーを生み出します。
このコラムでは、しなやかな体と強い心を手に入れるためのオススメ本をご紹介します。今回はこちら…

負けないカラダ〜Toughnessを手に入れる本 第37回

「男の聖地 角打ちに憩う」全国名物立ち飲み酒屋特選

小学館 / 700円 税別

2016-05-23

酒屋の店内で立ち飲みを楽しむ「角打ち」。全国に存在する、ビジネスパーソン御用達の「角打ち」を紹介した一冊。

各地で花咲く「角打ち」文化


「角打ち」という言葉をご存じでしょうか。私は北九州に出張した折に、初めてこの言葉を地元の方に教えてもらいました。

調べてみますと、お酒好きの方にはどうやら奥深い世界のようです。

そこで今回は、出張の多いビジネスパーソンにもおすすめしたい「角打ち」の魅力をまとめた本をご紹介します。

「角打ち」と「立ち飲み屋」の違い


近年、人気の「立ち飲み屋」とは異なる角打ち文化。

「角打ち」を辞典で調べてみますと、「酒を升にはいったまま飲むこと」と定義されています。諸説ありますが、もともとは江戸の庶民が酒屋の軒先で、升で量り売りしているお酒を飲んでいたことから生まれた言葉のようです。

全国に点在する「角打ち」ですが、早くからこの文化が浸透していたのは、東京や横浜を中心とした関東エリア、そして小倉や門司などがある北九州エリア。

同様に、酒屋での立ち飲み文化の歴史が古い関西では、角打ちではなく「立ち飲み」と呼ぶのが一般的です。

そのほか、味わい深い店が存在するのは、函館、仙台、名古屋周辺、広島、岡山、鳥取、熊本、大分、長崎あたりとのこと。

昨今、繁華街などに次々と誕生して人気を集めている「立ち飲み屋」は、酒屋が営業している角打ちとは異なり、立ったまま飲むスタイルの居酒屋と捉えるべきだと本書では説明しています。

北九州市には300件も


北九州市内には現在、300件もの「角打ち」があるそうで、一つの文化として浸透し、町のPRとしての役割も担っています。

なぜこれほど店数が多いかというと、北九州一帯の工場や会社で働く人たちが仕事帰りに酒屋に立ち寄る習慣があり、それが次第に広がっていったからと見られています。「角打ち」文化が根づいている北九州では、夜勤明けに一杯飲もうと、朝から利用する人もいるそう。

この地域の店で提供されるお酒の値段は、基本的には売値とほぼ変わりません。椅子などがないため、ゆっくり寛いで飲むことができないのが特徴です。短時間でぱっと飲めて、安い。それが人気の理由です。

名物女将やご主人を慕って


酒屋という場所柄、もともとつまみは店で販売している缶詰や乾き物がメインでしたが、角打ち文化が広がるにつれ、ポテトサラダやおでん、煮込みなどを提供する店も出てきています。

どの店もご主人や女将さんが名物で、その笑顔(あるいは独特な雰囲気?)も一緒に楽しんでしまうのが、正しい「角打ち」の楽しみ方です。

本書で紹介されている店は、江戸末期から明治〜昭和に創業した酒屋で、いずれも店自体に歴史があります。

たとえば、東京四谷にある「鈴傳(すずでん)」は、嘉永3年創業の酒店。ペリー来航が嘉永6年ですから、それより前に営業を始めていたことになります。

創業者は、現在の栃木県にあたる下野国の鈴木屋という造り酒屋の次男坊・傳兵衞さん。屋号はそこからとられています。現在のご主人は七代目にあたります。

店には、会社帰りに一息つくサラリーマンのほか、保育園に子どもさんを迎えに行く前に立ち寄るお父さんの姿も。地下一階に酒蔵があり、「日本中の地酒のすべてがここにある」という神話があるほどの人気店です。

常連に愛される理由


大阪で最大級の角打ちは「ウエダ商店」。50名は入れるほどの店内ですが、夕方6時にはいっぱいになってしまうそうです。

近隣のサラリーマンたちに”王国“と呼ばれているのは、東京・芝にある「内田屋西山福之助商店」。明治から続く酒店で、10数年ほど前に角打ち形式を始めました。厚揚げや鴨スモークなどのつまみも人気で、連日、混み合っています。

京都・中央区にある「松川商店」は、五代目のご主人が切り盛りする店。昔ながらの商家のたたずまいの中、京都らしいおばんざいが並びます。祇園や先斗町に近いことから、ふらりと舞妓さんが遊びに来ることも珍しくないのだとか。

高松にある「頼酒店」は、明治36年創業の酒店。“ほったらかし”が信条で、おつまみは乾きものと缶詰のみ。それでも、気さくな人柄の女将さんを慕って、地元の人たちが憩いのひとときを求めて訪れます。

豊橋の「立呑みあさひ」は、昭和2年創業の酒屋。立ち飲み文化の根づいていない東海地方で、昭和24年から角打ちを始めたそう。味噌カツやうなぎパイ、天ぷらや烏賊のぬたなどのおつまみを提供しています。80歳に近い二代目夫人の笑顔が評判です。

このように、本書で紹介されている店はいずれも常連さんに長らく愛さている店ばかり。初めて訪れるのには少し勇気がいりそうですが、読んでいるだけでも楽しさが伝わってきます。

地元の角打ち、出張先の角打ちをチェックしてみてはいかがでしょう。機会があれば、私もぜひ訪れてみたいと思いました。

(編集部:Y.C)