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ビジネスの成功は心身の健康から。
心と体は深く結びつき、互いに支え合いながら、時に思いもよらないパワーを生み出します。
このコラムでは、しなやかな体と強い心を手に入れるためのオススメ本をご紹介します。今回はこちら…

負けないカラダ〜Toughnessを手に入れる本 第27回

「良い習慣、悪い習慣」
ジェレミー・ディーン 著

東洋経済新報社 / 1,500円 税別

2015-07-30

私たちは思いのほか習慣に支配されている…。
無意識に根づいている日常の習慣について解き明かした一冊。

無意識に行動を選択している


変えようと思っても、なかなか変えることができないのが「習慣」。

私たちは一日の行動のうち、三分の一から半分ほどの時間を習慣に割いているといいます。自分で「これは習慣だ」とは意識せず、ぼんやりとした状態で知らないうちに行動を選択しているのが習慣です。

20世紀初頭、ロシアの生理学者イワン・パブロフによって、私たちは周囲の環境と行動を関連づけていることが証明されました。当たり前すぎて気づかないようなこと、たとえば朝起きてシャワーを浴びるとか、コーヒーショップで同じメニューを注文するとか、車の中で毎朝、同じラジオ番組を聴くといったことも、そのひとつです。

私たちは無意識下で、かなりの行動を習慣から選択していることがわかります。

理由が先か、習慣が先か


本書では人間が習慣的な行動をとりたがる理由についても、紹介しています。

たとえば、散歩でいつも同じ道を通る場合、「自分は池の鳥が見たいから、この道を通るのだ」というように、私たちは習慣に対して無意識のうちに意図を生み出そうとしています。

もちろん、それが本当の理由であることもありますが、実際にはたまたま初めての散歩でそこを通り、特に変える理由もないのでそのまま選んでいることもあります。習慣化した後につけた理由というわけです。

このような思考を「認知的不協和」といいます。

新車を買うとき、予想以上の出費になったとして、その理由を「この車にはそれだけ出す価値がある」と自分を納得させたりするのも、この心理です。

こうした意識の根底には「私たちは常に思考と行動を一致させたいと望んでいる」ということがあります。

環境との関連


私たちは目標と習慣を無意識に関連づけています。

本書の中に記されていた「停電中にトイレに入った際、何度も電気をつけようとしてしまった」という著者の興味深い行動がまさにそれです。

いつも車で移動している人が、歩いて5分のところにある店までも車に乗って行ってしまうとします。

このような人は移動手段として「徒歩」や「自転車」という概念がプログラミングされていない、あるいは関連づけが薄いのです。

習慣の効用


習慣のもう一つの側面として、決まった行動を日課として行うことによる安心感が挙げられます。

学生が大学の講義で毎回、同じ席に座ったり、ビジネスパーソンが週に何回も同じ店で昼食を採ったりするのもこれにあたります。

また、行動のルーティンは、家族を失ったり、何か大きなショックを受けたりするなど、強い感情的なストレスにさらされた時のセーフティネットの役割も果たしています。いつも通りに朝起きて電車に乗り、仕事をこなすことで、私たちの心はなぐさめられます。

ルーティンが招くミス


アメリカで起こったある航空機事故では、離陸時に必要な安全を確かめるチェックリストが機能していませんでした。一日10回以上も目を通すチェックリストに対して、パイロットは斜め読みするクセがついていたのです。

チェックリストに書かれている項目を見るのではなくて、自分が見ようと思うところだけを見るという状況が生まれていました。

こうしたことは、他の業務でも起こりがちです。

駅からすぐの場所で列車が正面衝突したある鉄道事故では、運転士はきちんと信号を見ていませんでした。乗客の乗り降りと駅の信号を確認するはずの車掌は、自分の位置からは信号が見づらいものの、運転士からははっきり見えることを知っていたのでベルを2回ならして発車オーライを知らせました。

一方で運転士は、この発車オーライのベルを聞いて信号も青だと思い込み、きちんと信号を確認せずに、列車速度の方に気を取られて発車したのです。

こうした深刻なケースに限らずとも、日々の習慣のせいで小さな失敗をしてしまうのが、私たち人間です。

牛乳を買って帰らなければいけないのに、いつも通りの道を通って帰宅したり、よく使う単語のスペルミスに気づかなかったりします。

なぜ頻繁にメールチェックしてしまうのか


スマートフォンやPCで、メール受信を自動チェック設定にしている方は多いことでしょう。これは行動心理学における「変動感覚強化スケジュール」に似ているのだといいます。

日常的なメールの中に、ごくたまにワクワクするようなメールが入っていることがあり、それを期待するが故に私たちはメールをチェックしてしまいます。そして、ワクワクするメールが届かないことが続くとフラストレーションがたまります。これはバスや電車が定刻に来ない状況と似ています。

ところが、さらにその状況が進むと、次第に私たちはフラストレーションに慣れて耐えることを覚え、気持ちも落ち着いていきます。これを行動心理学では「部分強化消去効果」と呼ぶそうです。

このような事例のほか、新しい習慣をつくるにはどれくらいの期間が必要でどうしたらよいか、これまでの習慣をなくすにはどうすべきかなど、習慣のメカニズムについてさまざまな角度から切り込んでいる本書。自らの日常行動を省みるのに役立つ一冊です。

(編集部:Y.C)