コラム | COLUMN
「都心集中の真実 ─東京23区町丁別人口分析から見える問題」

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第82回

「都心集中の真実 ─東京23区町丁別人口分析から見える問題」
三浦 展 著

ちくま新書 / 740円 税別

2018-10-15

東京23区の人口が増え続けているのはなぜか。都市の人口の変化と地域による人口格差についての考察。

都市集中を数字から分析


かつて時代を牽引していたパルコでマーケティング雑誌『アクロス』の編集長を務めていた三浦展氏。その後、三菱総合研究所を経て、カルチャースタディーズ研究所を設立しています。

本書は消費、都市、郊外の研究を専門とする三浦氏による新刊本です。

すでに周知されているように、東京23区は人口が増加傾向にあります。その要因には外国人の移住、仕事を持つ女性の居住、富裕層ファミリーの増加などが挙げられます。

三浦氏はさまざまな数字を読み解きながら、人口の流動と都市の移り変わりを考察しています。

23区だけ人口が増加していく


国立社会保障・人口問題研究所の推計では、23区の人口は2015年の927万2740人から、2020年には20万人以上増えて948万6689人に達し、2025年には963万人、2035年には976万人でピークに達するとされています。その後は微減しますが、2045年でも970万人強の人口を維持するとみられています。

2045年の人口が、2015年の人口よりも多くなると考えられているのは東京だけ。さらに人口が減らないのは23区だけという見方です。

また、23区在住の外国人は1985年から着実に増えていて、2017年は85年よりも29万人増加しています。それでも、他の先進国の人口比重と比べると、まだ少ないのが現状です。

日本人の若年人口が減り続けているかぎり、外国人がその労働力を補うと考えられています。近年、とくに増加しているのは中国人で、ベトナム、インドも続いています。

インド人の人口は江戸川区がダントツ1位。それには理由があります。

江戸川区に暮らすインド人たち


1987年に日本にやってきたという貿易商の男性のインタビューが、当時の様子をよく伝えています。

江戸川区に倉庫を構え、地下鉄の西葛西駅ができたと同時に西葛西に事務所を移したというジャグモハン・チャンドラニさんによれば、その頃、西葛西のインド人は一世帯だけだったとか。

西葛西にインド人が増えたのは1998年で、パソコンの2000年問題に対応するエンジニアが多数日本に呼ばれたことが理由です。エンジニアたちは当初、ホテル住まいでしたが、菜食主義者も多く、不便していました。

当時はまだインド人になじみのない日本の大家さんが多かったので、給与明細を見せて納得してもらったり、チャンドラニさんが保証人になったりして部屋を借りました。2年ほどすると、URも入居させてくれるようになったといいます。

居住者が増えたことから、料理が得意でないインド人男性のためにチャンドラニさんはインド料理の店を開きます。さらにファミリーで暮らすインド人が増えたことから、幼稚園やインド人学校も設立しました。こうして、多くのインド人が江戸川区に住むようになります。

「荒川がガンジス川のように見えるからインド人が西葛西を好む」という理由もあるのだとか。近い将来、インドでは日本の技術で新幹線をつくることから、その研修でさらに都内のインド人が増えるとみられています。

ニュータウン再生のカギとは?


ほかにも、未婚女性が増加している地域やその理由、高齢化が進んでいる郊外の現状など、戦後から現在までの数字の推移を読み解きながら、詳しく言及しています。

最後に、三浦さんが考えるニュータウンの再生アイデアも記されています。キーワードは、女性や子どもが夜でも安全で楽しく歩ける「ウォーカブル」と、シニアや女性が住居の近くで楽しく仕事ができる「ワーカブル」。

いつの時代も、安心安全で暮らせる街づくりが求められます。

(編集部)