コラム | COLUMN
「日本人は知らない中国セレブ消費」

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第80回

第80回「日本人は知らない中国セレブ消費」
袁静 著

日本経済新聞出版社 / 850円 税別

2018-08-06

新しい旅を求める中国人訪日客の嗜好とは…? 中国の新階層“プチ富裕層”の消費傾向に迫る。

全人口の1割にあたる“プチ富裕層”とは?


日本では年々、海外からのお客さまが増えています。たとえば平日の東京・銀座を見てみると、中央通りの歩行者7〜8割ほどがアジア諸国の観光客ではないかと思えるほどの賑わいです。

インバウンドの要ともいえる中国からの観光客は日本の何に魅力を感じ、どんな旅を求めているのか。

著者の袁静氏は上海生まれで、日本に留学し、早稲田大学で学んだのちに日経BP社に入社して10年間を日本で過ごしました。

帰国後、北海道をテーマにした雑誌「道中人」を創刊し、その後、九州をテーマにした「南国風」も創刊。両誌を合併して、中国富裕層向けに日本の魅力を伝える雑誌「行楽」を発行しています。現在は上海と東京にオフィスを構えて、中国での日本の観光PRを手がけています。

そんな袁氏が、日本人が気づいていない日本の魅力、改善すべきサービスなどについて記したのが本書です。
中国では個人旅行者が急増しており、2016年は個人6.5割、団体3.5割の比率でした。これは全国平均値なので、上海や北京などの大都会に限ってみると8割以上が個人旅行者です。

そんな個人旅行者の中で、袁氏が注目しているのが「プチ富裕層」。

格差社会である中国では資産が1兆円を超える富裕層も存在しますが、その数はわずか。プチ富裕層は新しい階層で、富裕層には入らないけれど、中国社会で上位1割に入る人たちを指します。1割といっても、日本の全人口より多い数です。

著者が発行する「行楽」はまさにこのプチ富裕層をターゲットにしています。平均年齢32.7歳で、平均世帯収入870万円。収入でカテゴライズするというよりも、新しい消費スタイルになじんだ人たち。ブレンドコーヒーよりもカプチーノを頼む方がお洒落だと感じるような感覚の人たちです。

「深度游」という旅のかたち


プチ富裕層は「深度游(シュンドゥヨウ)」を好みます。これは中国語で「深みのある旅」という意味です。

いわゆる有名どころの観光地巡りではなく、もっと日本の社会や文化を掘り下げて知りたいというニーズを持っています。

競争社会である上海や北京では、日常生活も常に追いまくられています。そんなプチ富裕層は日本への旅で「癒し」を求めます。中国人が殺到するお店で商品を奪い合うようなことは避けたい、できれば中国人のいないところに行きたいと考えています。

プチ富裕層から見た日本の魅力のひとつに「日本ではフツーにあるもの」が挙げられます。たとえば星空、雪景色、海などもそのひとつ。とくにオーシャンビューは中国の人たちにとって憧れなのだとか。オーシャンビューの部屋はそれだけで価値があります。

ゴミひとつない美しい農村風景、大自然が広がる場所でも安心・安全に子連れ旅行ができること、レストランでの明朗会計なども新鮮なものとして受け止められています。

著者が企画した「深度游」ツアーでとくに人気だったのは、高野山での修行体験ツアーや東京・清澄白河のカフェ巡り。お洒落な書店も注目のテーマで、東京・代官山の蔦屋書店は訪日中国人の聖地になっているのだとか。

プチ富裕層はこうしたツアーをきっかけにして、さらにSNSなどで情報収集し、次の旅へと繋げていきます。

少し驚いたのは、日本でよかれと思っているサービスの中には、訪日中国人にとって逆効果なものがたくさんあること。

日本の旅館やホテルではグレードの高いイメージのある角部屋ですが、廊下の突き当たりにある部屋は風水でよくないとのことで中国人は嫌います。「鬼(幽霊)」が集まると考えられているのだとか。同じく一人でツインルームに泊まることも嫌うのだそうです。

訪日中国人の嗜好やサービスのとらえ方、生活習慣の違いなどを細かく知ることができる一冊です。

(編集部)