コラム | COLUMN
「知的戦闘力を高める 独学の技法」山口 周 著

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第75回

「知的戦闘力を高める 独学の技法」
山口 周 著

ダイヤモンド社 / 1,500円 税別

2018-03-05

人生100年時代に必要なスキルは独学。骨太でしなやかな知性を身につける知的生産システムとは……。

独学をシステム化する


本書は知的戦闘力を高めるための独学技術についてまとめたもの。著者の山口周氏は、独学は大きく4つのプロセスから成り立っていると説明します。

 1)戦略  2)インプット  3)抽象化・構造化  4)ストック

これまでも独学については読書術や図書館利用術といった側面から数多く語られてきましたが、そこでは主にインプットが取り上げられてきました。

一方で山口氏は、独学を4つの段階から構成されるシステムと捉えることで、知的戦闘力は高まると考えています。

インプットの量が多いことはもちろん重要ですが、それらをどう扱えばいいのかが解説されています。

インプットしたものを「覚えない」技術


膨大な量のインプットを行うと、そのうちの多くは忘却されます。このとき「いかに忘却を防ぐか」を考えても意味がありません。

独学をシステムで考える際に最も重要なのは「覚えることを目指さないこと」だといいます。

「高い知的戦闘力」というと多くの人が「膨大な知識量=知的ストック」と考えがちですが、現在のように変化の激しい時代にあって、インプットされた多くの知識は短期間で陳腐化してしまいます。

そのため山口氏は「覚えないこと」を前提にした独学のシステムを構築しました。

どういうことかというと、脳にインプットした情報のエッセンスだけを汲み取って、外に出してしまうということ。汲み取ったエッセンスはフリーアクセス可能な外部のデジタルストレージなどにストックしていきます。

こうしたプロセスをアインシュタインの言葉と重ねています。

「本やノートに書いてあることをどうして憶えておかなければならないのかね?」
(アルバート・アインシュタイン / 新聞記者のインタビューで、光速の数値を応えられずに)

これから必要なのはΠ型人材


ではなぜ、いま独学が重要なのでしょうか。本文では理由がいくつか挙げられていますが、そのひとつが「クロスオーバー人材」という観点です。

クロスオーバー人材を簡単に説明すると「領域を越境する人」。昨今、人材育成などの世界では「Π型人材」の重要性が説かれています。

Π型人材とは、縦棒=スペシャリストとしての深い専門性を2つの領域で持ち、さらに横棒=ジェネラリストとしての幅広い知識を併せ持った人ということ。

さまざまな専門領域が密接に関わり合う現在では、専門性だけで構成したチームではイノベーションを起こすことが出来ません。

そこで必要となるのは「新しい結合」です。それまで異質のものであると考えられていた領域を横断し、つなげていく人材こそがイノベーションを起こせるわけです。

Π型人材の横棒となる広範な知識は、やはり独学で身につけるしかありません。

学びは「テーマ」で方向性を決めて


独学をシステムとして捉えた場合の最初のステップである「戦略」。

これは「何について学ぶか」を意味しています。言い換えると「何を学ばないかを決める」ことでもあります。

現在の世界は、膨大な情報がオーバーフローしています。一人ひとりの時間が有限であることを考えれば、独学の戦略を立てるとき、何を学んで何を学ばないかを決めることは、学びの深さにも繋がっていきます。

ここで気をつけるべきことは学びを「ジャンル」で捉えるのではなく、「テーマ」として方向性を持たせること。

書店ではジャンルごとに棚が分かれているわけですが、それらを横断してテーマで本を選ぶようにするというわけです。

たとえば、組織における権力構造について学びたいなら「経営」のジャンルを抑えるのは普通の流れですが、ここから得られるのは基礎知識でしかありません。

一歩進んで、ユニークな知的戦略の形成に繋げたいのであれば、さまざまなジャンルのインプットからエッセンスを汲み取るのがベストです。塩野七生氏の「ローマ人の物語」やマキャベリの「君主論」、フランシス・コッポラの映画「ゴッドファーザー」から示唆を得ることも出来ますし、「サル学」などの霊長類研究などからも知識を得ることが出来ます。

長持ちする武器を選ぶ


このようにして、1章「戦う武器をどう集めるか?」で戦略の練り方について伝授したのち、本書はインプットの技法、知識を使える武器に変える抽象化・構造化の話、知的ストックの貯蔵法・活用法へと続いていきます。

最後にはリベラルアーツでおすすめの書籍も紹介されており、独学へのモチベーションを高めてくれます。

本文では、山口氏が推奨する独学技術を裏付けるような偉人たちの言葉が随所に登場します。「そういえば、この天才はこんなことを言っていたっけ」と思い出したり、「こう汲み取ればいいのか」と気づきを得たり。

こうした構成からも、山口氏の「ストック術」を垣間見ることができます。

(編集部)