コラム | COLUMN
「あなた」という商品を高く売る方法

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第70回

「地方創生大全」
木下 斉 著

東洋経済新報社 / 1,500円 税別

2017-10-02

まちビジネスの専門家がすすめる地域再生の方法とは……? 過去の成功事例に頼らずに地域が生まれ変わるヒント。

地域創世のプロセスを探る


地方再生に注目が集まる昨今。地域ブランドのPRや移住の提案、観光による集客の盛り上げなど、全国でさまざまな施策が展開されています。

著者は早稲田大学高等学院在学中に、全国商店街合同出資会社の社長に就任。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業した後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学し、在学中に経済産業研究所や東京財団などで地域政策系の調査研究を行ってきました。

2009年に全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立し、地域活性に尽力しています。

2014年に地方創生政策が立ち上がり、地方創生総合戦略が策定され、2015年から全国各地で実施されています。

長年、地方に携わる仕事をしてきた木下氏は、地方に光が当たることを喜ばしいと話します。一方で、どうアプローチしていくかという方法については、さまざまな課題があると捉えています。

たとえば、いまメディアでは「地方移住がトレンド」といった流れが生み出されつつありますが、そうした内容の多くは、都市部から見て理想的な田舎暮らしを実践している特別な地方移住者にフォーカスしているといいます。

話題性を求めるばかりに、それぞれの地域に必要な課題解決ではなく、都市部で話題になるような側面が露出されているのではないかと述べています。

特産品開発のワナとは?


本書の中で木下氏は、5つの視点から地域の構造問題についてまとめています。

 ・ネタの選び方
 ・モノの使い方
 ・ヒトのとらえ方
 ・カネの流れの見方
 ・組織の活かし方

たとえば、ネタの選び方の場合。

「ゆるキャラ」による地域活性化の効果を、プラスの経済効果だけで推し量るのは危険だと解説しています。何かが伸びれば何かが減るというトレードオフの問題や、供給のボトルネックといった問題があるからです。

同じく特産品開発についても、地域の原材料を加工してつくった結果、実際には「売れないもの」がどんどん開発されている現状があるといいます。

その原因は「つくってから売りに行く」という流れが出来てしまっているから。予算を確保しやすい特産品開発は、価格もコストも積み上げ型で決められることが多く、結果として高価格になりがち。つくり手の都合が優先しがちなため、失敗につながるのだと分析しています。

ではどうすればいいのか。
特産品開発に必要なのは、予算ではなく「営業」だと木下氏はいいます。その好例として、「東京八百屋の会」の取り組みが紹介されています。

論理的、定量的な議論を意識する


木下氏は「多くの地域がなぜ他地域とまったく同じことをするのか?」と疑問を呈しています。

そして、いま地域に必要なのは「限られた一部の人たちに熱烈に支持される、突出したコンテンツを用意すること」と記しています。事例として「バレーの有名指導者がつくった民間体育館」や「ターゲットをサイクリストに絞ったホテル」などが紹介されています。

たしかに自分の行動を振り返ってみても、何度も訪れたくなるような地域には、そこでしか体験できないものがあるような気がします。さらにそうしたコンテンツは最大公約数的な魅力ではなく、同じような価値観を持つ人たちや、何かの趣味が共通する人たちによって、熱く支持されているように思います。

ほかにも著者は、人口の増減や交通網、お金の流れ方、そして組織などについて、時に辛口でありながらも明快に打開策を展開しています。

衰退を引き起こしている問題を解決するためにはトライ・アンド・エラーをくり返してみること、なにごとも一貫性より柔軟性を優先して、初期段階の決定に固執せず、検討が進んで情報が収集された後の分析による変更も視野に入れておくこと、といったプロセスを提案しています。

地方の問題としてのみならず、人が集まってものごとを動かすさまざまなビジネスシーンに活かせるようなヒントが盛り込まれています。

(編集部:Y.C)