コラム | COLUMN
部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第54回

「部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書」
出口治明 著

角川書店 / 1,400円 税別

2016-06-06

リーダーの要諦とは「どんな部下も信頼して、仕事を任せること」……。
社会の方向性を見極め、変化に適した人材に仕事を任せるマネージメント術

出口流「任せるしくみ」


著者の出口治明氏は、日本生命保険相互会社を退社後、2006年にネットライフ企画株式会社を設立。2008年にライフネット生命を開業しました。

本書には「強い会社」「強い部署」をつくるため、部下にどう仕事を任せていくべきか、出口流の極意が記されています。

出口氏が重要視するのは「任せるしくみ」をつくること。

それにより、経営と業務執行の分離が実現し、ダイバーシティ(多様性)への認識が高まり、グローバル経済の変化に対応出来る組織になると説いています。

意志決定をスピーディーにするには?


ここに書かれている「任せるしくみ」は、非常に具体的です。

たとえば、「誰が、何を、どこまで決定するのか」という意志決定をスピーディにするためには、権限の範囲を金額によって決めるのがよいと説明しています。

・100万円未満は課長が決める
・100万円以上、500万円未満は部長が決める
・500万円以上、1000万円未満は担当役員が決める…

といった具合です。こうしたルールを決めておけば、決められた範囲内(権限内)において、職責上位者の承認が必要なくなります。

さらに「課長の決定に、部長は口出ししてはいけない」とも記しています。
一度、権限を委譲したら、その権限は部下の固有のものであり、上司といえども口を挟むことはできないということです。

たとえば課長がA社の50万円のコピー機を購入することを決めた場合、部長はB社に変更しろと命じることはできません。

こうしたルールをつくっておかないと、課長は安心して仕事を進められず、結局は課長の時間も部長の時間も奪われてしまうといいます。

ルールは明確にする


判断のルールづくりについて、ひとつの例が紹介されています。

講演を依頼されることが多い出口氏は、秘書にその対応を任せるにあたって、判断に迷わないようなルールを伝えてあるといいます。

・社内ネットワーク上に公開してあるスケジュールは誰でも自由に確認、閲覧していい。
・スケジュールが空いていれば、私の許可なく講演を入れていい。
・講演内容(テーマ)にはこだわらない。条件は原則として聴講者10名以上のみ。
・いつ、どんな講演の予定を入れても、嫌だとは絶対に言わない。
・ただし、金融庁から呼ばれたら、すべての予定をキャンセルし、金融庁を最優先する(免許事業である保険会社にとって、金融庁への対応はプライオリティが高いため)

このようにルールを明確にすることで、任された側が迷わず業務を進められるようにしています。

プレーイング・マネージャーになってはいけない


上司と部下の関係をマネージャーとプレーヤーと呼ぶことがありますが、出口氏は「マネージャーはプレーヤーの代わりをしてはいけない」といいます。

部下から上がってきた仕事の出来を見て、「自分ならもっと上手にできる」と思うことも多々あるでしょう。プレーヤーが60点の出来だったら、「自分なら80点以上の仕事ができる」とどうしても思いがちです。

しかしその際、マネージャーがプレーヤーの仕事を手直しをして、80点に引き上げたりしてはいけません。60点取れていたら合格点を与える。60点で我慢する度量を持つことが、マネージャーには求められます。

それよりも、部下が10人いたなら、全員が毎回60点取れるようにすることがマネージャーの仕事だと著者は語ります。

そして全員が60点を取れるようになったら、次は全員が65点を取れるように引き上げていきます。

上司に必要なのは「洞察力」


さらに本書の中には、「仕事を抱えてしまう上司」の3つの共通点も書かれています。

・人間の能力や使える時間は有限であることがわかっていない
・部下の仕事が60点では納得できない
・判断のスピードが遅い

思い当たる節がある方もいらっしゃるかもしれませんね。

そのほか、部下を動かす3つの方法や、タイプ別の部下の鍛え方などが紹介されています。

出口氏は、リーダーとしての洞察力を磨く手法として「人に会う」「たくさん本を読む」、そして「たくさん旅をする」ことをすすめています。

人間の本質を知ること。リーダーが身につけるべき姿勢の基軸は、そこにあるように思えました。

(編集部 Y.C)