コラム | COLUMN
1時間でわかる電力自由化入門

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第52回

「1時間でわかる電力自由化入門」
江田健二 著

グーテンブック / 1,200円 税別

2016-04-04

4月から始める電力自由化に向けて基本から学べる入門書。
私たちの暮らしがどのように変わっていくかが見えてきます。

電力自由化って?


電力自由化によって、これからの世の中はどう変わっていくのか。いま社会全体が大きな期待を抱きながら、新しい世界に向かおうとしています。

とはいうものの、私たち一人ひとりは電力自由化についてよく理解できていないというのが実情ではないでしょうか。

本書では電力自由化の仕組みや、それによって起こりうるメリットやデメリット、未来予想図などがわかりやすく説明されています。

世界では電力自由化が進んでいる


世界ではすでに電力の自由化が進んでいるといいます。

日本よりも10年ほど早く自由化に着手したアメリカでは、州ごとに法律が違うため、積極的に進めている州とそうでない州では状況が異なりますが、自由化のおかげで多くの電力会社が生まれ、周辺事業ではベンチャー企業も数多く誕生しています。

EUはアメリカよりもさらに進んでいて、多くの企業が電力事業に参入し、さまざまな料金プランが登場しています。また、ガスや水道、インターネットといった各種サービスをまとめて提供する総合エネルギー企業も誕生しています。

これらの総合エネルギー企業は世界レベルで戦える規模にまで成長していて、今後、日本やアジアの市場に進出してくることも予想されます。

一方で、アジア諸国を見てみますと、現時点ではまだまだ自由化は進んでいるとはいえません。ただ、今後は他の地域と同様に自由化されることが期待されています。

アメリカやヨーロッパ、日本などでは電力需要はこれから大きな伸びはないと予想されますが、アジアは将来的に世界最大の電力需要マーケットに成長すると考えられています。

そういった観点からも、今回の日本の電力自由化は「電力事業がアナログからデジタルに変わる」というエポックメイキングな出来事であり、大きなビジネスチャンスともいえるわけです。

多様化するサービス


これからは、電力事業に新規参入する企業が増えていきます。

こうした新しい電力会社の多くは発電や送電をする会社ではなく、売電を行う会社です。数年前までは30〜40社ほどでしたが、いまや約800社が登録していて、近い将来、1000社を上回るだろうと言われています。

大手ガス会社や石油元売り会社などのエネルギー系、商社系といった大企業から、社員10数名の小規模の企業まで、今後ますます登録数は増えるでしょう。通信や小売関連、IT系などの電力会社も増えていくかもしれません。

現在、経済産業省などが制度の見直しを行っており、一般家庭などに向けての電力販売について、一定に基準を設けるかどうかの議論を進めています。

いずれにしても私たち生活者は、多くの電力会社による、多くの料金プランの中から電力供給について選択することになっていきます。おそらく携帯電話のプランと同じような状況になるでしょう。

長期割引や家族割引、団体契約といったプランも登場するでしょうし、家庭に蓄電池があれば、夜間など安い時間帯の電気を選んで購入するプランも出てくることが予想されます。

電気自動車や住宅とセットにして電気を販売したり、発電設備を持つ鉄道会社が新しいサービスを始めたりといった可能性もあります。

メリットとデメリットとは?


しかし、電力自由化にはメリットもあればデメリットもあります。

メリットとしては、自分の生活スタイルに合ったプランやメニューを選択できるようになるほか、電力の検診をデジタル化した「スマートメーター」の登場によって、周辺事業で新しいサービスが登場したりすることが挙げられます。

逆に多種のサービスが登場することで、インターネットからの情報収集に慣れない高齢者などは、混乱してしまうといったデメリットも予想されます。

また、電力会社同士の競争が激しくなることで、短期的な利益の追求が激化し、長期的な投資や大規模な投資を控える傾向が強まる可能性もあります。

そうなると、過疎地や離島などへの投資の気運が低下してしまう可能性も否定できません。

このように都市部の住民にとってはたくさんのサービスから選べるといったメリットが生まれますが、鉄道など交通機関の問題と同様に、過疎地では電力の安定供給が難しくなったり、電気料金の値段が上がったりといったデメリットが生まれることも考えられるわけです。

電力とITの連携がもたらす未来


本書では、電力自由化に向けた個々の対応として、まず「自分たちが支払っている電気料金をきちんと把握すること」を挙げています。過去一年間の電気料金を調べて、冬と夏の変化を見てみるなど、自分たちの電気使用状況を把握することが大切になります。

さらに進んで、企業、自治体、家庭が取り組むべきことについても具体的に説明しています。

そのほか、第4章では「電力自由化がもたらす未来」をテーマに、電力とIT事業の連携についても詳しく紹介されています。

全編にわたってとても平易な言葉で記されていて、専門的な用語には注釈もつけられ、電力事業に詳しくない初心者でもスラスラと読み進めることが出来ます。

家庭の電力について見直してみたり、新しいビジネスアイデアを考察してみたり。ぜひとも読んでおきたい一冊です。

(編集部 Y.C)