コラム | COLUMN

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第44回

「東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと」
伊藤元重 著

東洋経済新報社 / 1,400円 税別

2015-08-18

読書法や情報の整理術、時間管理の仕方、発想力の鍛え方など、よい仕事をするためのヒント集。

若い世代に向けたメッセージ


今回ご紹介するのは、東京大学大学院経済学研究科教授の著書が、若い人たちに向けて人生の戦略について語った本。

人間はとかく目先のことや周囲に流されがちですが、自分の中長期の目標を実現するためにいますべきことを、論理的かつ緻密に考えることが大事だと説いています。

「知的戦略行動」とはいったいどんなものなのでしょうか。

本来の人生の目標は何であるかを考える


第一章の「人生に戦略があってもいい」では、企業の戦略と同じように人生でも戦略をたてるべきだと語っています。

ビジネスの戦略を考えたとき、重要となる2つのポイントがあります。

ひとつは企業の目的、ミッション。何を目標にしてビジネスを行うかということです。

もうひとつは、将来にはさまざまな不確実性があるということ。予測できない変化に柔軟に対応しつつも、守るべきルールを決めて死守する姿勢が大事です。

では、人生の戦略はどうでしょうか。

世界で最も著名な経済学者の一人であるクレイトン・クリステンセン教授の論文によれば、ハーバード大学のビジネススクールの卒業生は卒業後、必ずしも幸せではないといいます。大成功した人もいる一方で、人生を踏み外してしまうなど、必ずしも幸福とはいえない卒業生もたくさんいます。

優秀な人が多いはずの卒業生で、なぜそんなことが起こってしまうのか。

それは「人生における戦略を誤ったからだ」と著者はいいます。

ビジネススクールの卒業生のように目先が利く人は、どうしても目先の成果に目を奪われてしまう。たとえば「幸せな家族生活」が人生最大の目標であったとしても、こうした人たちは、子どもが何週間も前から遊園地へ出かけるのを楽しみにしていたのに、急なプレゼン準備のために、泣きわめく子どもを叱りつけて仕事に励んだり、奥さんが寝込んでいるのに遅くまで帰宅しなかったりといったことをしてしまいがちです。

こうした行動の一つひとつは小さなことでも、本来の目標である「幸せな家族生活」にとっては、マイナスの影響を及ぼしてしまうわけです。

発想力を鍛えるには?


知的活動には3つの異なるステップがあるといいます。

ひとつめは、外から知識を習得すること、二つめは、自分で考え整理して発信すること。そして三つめは、人とのインストラクション(相互作用)を通じて、思考を発展させていく活動です。

いま大学教育では、三つめの「人とのインストラクション」が、グループディスカッションやディベートといった形で積極的に取り入れられています。

他の人と意見をぶつけ合うことで、私たちはより考えを深めることができるからです。

読む→書く→話す、というプロセスを経ることで、さまざまなレベルでの知的活動が実現できます。

広まりつつある「行動経済学」


経済学の論理は合理性の原則に基づいていますが、私たち人間はすべて合理性で割り切れるものではありません。合理性だけで人間の行動は分析できないわけです。そうした理解の上で、人間の行動パターンを考えたのが「行動経済学」です。 いま、この行動経済学の考え方は急速に広まってきています。

本書の主題である知的活動の向上という面でも、行動経済学の原理が役立ちます。

たとえばダイエットをしたい人は、目の前にあるケーキを食べるかどうか悩みます。太る、糖尿病になってしまう、といった将来の不安要素を考えるものの、目先の誘惑に負けやすいのが私たち人間です。

そこでダイエットの行動学では、さまざまなアドバイスを行っています。家にケーキを置かない、一日1万歩を歩かない限りは帰宅しない、会食の食事は必ず三分の一残す……。こうしたルールを決めてダイエットに成功した人もいます。

一方で「明日からダイエットを始めよう」と考えてケーキを食べてしまう人は、いつまでたってもダイエットを始められません。

そこで有効なのが「明日はない」と考えること。これは仕事術にも当てはめることができます。

人間は、いつかやらなければならないことを放置しておくとストレスを感じます。ですから、目の前にある仕事のうち、すぐに処理できることと、時間がかかりそうだが、必ずやらなければいけないことを分けておく。

すぐにやらなければいけないことは、ダイエットのたとえでいえば「明日はないと思う」ことに似ています。

後輩へのアドバイスに


そのほか、最終章の「ロールモデルを探せ」では、同世代の存在の大きさが語られています。

若い世代に向けた本書ですが、どの世代にとっても、改めて仕事の向き合い方を見つめ直す機会になるでしょう。後輩や部下へのアドバイスにも役立ちそうな一冊です。

(編集部 Y.C)