コラム | COLUMN

「気になる本はたくさんあるけれど、忙しくて、ついつい読まずに終わってしまう…」。そんなビジネスパーソンのために、仕事に役立ちそうな本、これからの人生をより豊かにしてくれそうな本を編集部がピックアップ。内容を“美味しいとこ取り”でご紹介します。今回はこちら…

ちょっと立ち読み〜ビジネスに強くなる本 第13回

「間抜けの構造」
ビートたけし 著

新潮新書/714円

2013-01-07

「間を制した人が成功する」日常生活のさまざま場面に存在する“間"。物事の方向性を左右してしまう“間"について、ビートたけしさんが考察した一冊。

世の中には「間がいい人」と「間が悪い人」がいますよね。 この“間"というのは実にやっかいで、コントロールしようと思ってもなかなか意のままにならないもの。「場の空気を読む」という感覚に近い部分もあります。
かつて漫才ブームで一世を風靡し、今では映画監督として映像の中で“間"という時間を操るたけしさん。お笑いの世界では、たくさんのお弟子さんを抱えるお師匠さんでもあります。そんなたけしさんから見て、芸人さんの中にも間の悪い人というのが確実に存在するそう。 お笑いの世界は、間の掴み合い。間がよくなければ笑いは生まれませんし、人気も出ません。資質の問題が大きいですが、本人が気づいて努力を重ねていけば、ある程度は変わっていくものでもあるようです。

たけしさんは、小さい頃から落語を聞いてきたとか。落語には独特の間があって、演者の特徴が如実に表れるといいます。その日の客席の反応を見ながら、リズムやテンポを変えていく漫才に対して、落語は演者が自分の間合いにどうやって観客を引き込むかが鍵となります。

面白いエピソードは、落語家さんが舞台に登場する時に鳴る出囃子の話。 落語では最初に「タタ、タンタンタン…」とお囃子が鳴ってから演者が登場し、座布団に座ってお辞儀をします。この一連のリズムで、落語家さんはお客さんを自分の間合いに引き込んでしまうわけですね。 落語が上手いといわれている人ほど、この一連の動作の型が決まっているのだとか。 上手い人は、座ってお辞儀をして、頭を下げた時にタイミングよく出囃子が終わる。 それで頭を上げて「え~っ」と、話し始めます。 一方、下手な人は、お辞儀を終えて頭を上げてもまだ出囃子が「…チャチャチャンカチャカチャカ」と鳴っていて、終わるのをしばらく待ってから「え~っ」と始めてしまう。 今度テレビで落語を見る機会があったら、ぜひ確かめてみようと思いました。

もう一つ、本書で印象的だったのが「テレビタックル」での討論の話。 討論のときにどこで話にすべり込んでいくかというのは、縄跳びに入るタイミングと似ているそう。 上手い人は、相手が呼吸するタイミング、具体的には「息を吸う瞬間」に入っていくのだいいます。人気のあるキャスターやアナウンサーは、このあたりの間合いを熟知しているのだとか。 この間合いを取るのが下手な人は、なかなか討論に参加できず「もっと僕にもしゃべらせてくださいよ~」と、なるらしい。 確かに、テレビを見ているとそういう方いらっしゃいますよね。

いくつかテクニックもあるそうです。 最近の傾向としては、話に割って入ろうとするときに相手を否定する言葉から入らず、「まさに、あなたの言うとおり」と肯定してから、すっと入っていく。 人間というのは不思議なもので、自分が熱く語っている時に「それは違うよ」と割り込まれると即座に「何言っているんだ!」と反応してしまうけれど、「おっしゃる通り。あなたの意見は正しいです」と割り込まれると、一瞬の間が生じて気勢をそがれてしまうもの。間のとり方の上手い人は、そう割り込んですぐに「でもね…」と違う話に持っていってしまうそうです。

そのほか、討論で少し長めにしゃべりたい時には、「私の言いたいことは2つあります」と言ってしまう。ここで「3つあります」と言うと「そんなにしゃべるのか」という空気になるので、2つがちょうどいいらしいです。 そして、1つめの話はすごく手短に終わらせる。「~の見解には反対です」といった具合ですね。そうやって「この人の話は早く終わりそうだ」と思わせてから、2つめに本当に言いたいことを長めに主張すると、聞いてもらいやすくなるそうです。 このテクニックは、日常でも使えそうですね。

野球ではピッチャーがバッターの間を外したり、サッカーではパスやシュートの間を読んだりと、スポーツにおいて間の善し悪しは重要な要素。映画や演劇、音楽や文学といった芸術でももちろん間が大切です。

人生においても間というものが作用していて、さまざまな出来事がタイミングよく現れることがあります。例えばその出来事が一見よくないことに見えても、それが次のステップへ進むきっかけになったりして、後から考えると実にいい間で起こってくれたと思うことがあったりします。 「生と死という始まりと終わりがあって、人生はその間でしかない」と語るたけしさん。間は不可思議で、とうてい理解しきれないもの。どんどん物事のスピードが増す現代社会にあって、私たちはこの日本独自の感覚である“間"をもう一度見直し、ひと呼吸おけるくらいの余裕を持たなくてはいけないのかもしれません。

(編集部:Y.C)