コネクティッドソリューションズ社の
「画像技術」

高い画像技術を活かし、さまざまな社会課題の解決へ

画像:人口減少のイメージ

今、日本における産業の現場はさまざまな課題に直面している。その背景の一つとして「生産年齢人口の減少」が挙げられるだろう。総務省の統計によれば、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、総人口自体も2009年以降は減少に転じている。
それを受け、現場の課題は複雑さを増している。近年、国が推進する「働き方改革」では、将来に向けた対策の一環として、労働制度・働き方の見直しが行われている。例えば長時間労働の是正や、柔軟な働き方がし易い環境整備など、企業が対応を迫られる課題は多い。
また、農業など第一次産業の現場では、すでに高齢化・後継者不足などによる就業人口の減少が顕著だ。食の安全性や生産性の向上など解決すべき課題も多く、現場に大きな負荷がかかっている。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社では、このような社会・現場課題を解決するために、高い技術を活かしたB2Bソリューションを開発している。その際に重視しているのは「現場との共創」。各現場が困っていることは何なのか、本質的な課題解決のためにどんな技術が活かせるのか、現場との密なコミュニケーションで、“生きたソリューション”を創出しているという。

では、現場ではどのようなソリューションが生まれているのだろうか。幅広く展開する同社の「画像技術」を活かした事例をいくつか見てみよう。

(1)ストレスを可視化:非接触で負荷なく健康管理を行う

画像:ストレスを可視化のイメージ

働き方改革の一環として、従業員の健康管理充実が求められている。企業が従業員の健康を保持・増進することは、QOL(Quality of Life 人生・生活の質)やQOW(Quality of Work 仕事の質)の向上につながり、結果的に企業の生産性向上に貢献する。「ストレスチェック義務化」など、社会においてもさまざまな動きがあるが、企業への負荷も大きく、細やかな健康管理が行き届いていない企業が多いのが現状だ。

こうした課題解決に活かされているのが「非接触バイタルセンシング」だ。PCなどに搭載したカメラで、オフィスで働く社員の顔を検知し、健康状態を読みとる。

非接触バイタルセンシングのイメージ。左上に「心拍数」、左下に「脈波」が表示されている

「人の脈波からは、交感神経と副交感神経の働きを読みとることができます。その人が、いまリラックスしているか、ストレスにさらされているかなどを、画像を通じて分析することができるのです」そう話すのは、開発担当者であるパナソニック コネクティッドソリューションズ社・イノベーションセンターの中村 剛氏。毛細血管の働きで変化する顔色に表れる「原信号」検知し、そのデータから「脈波」を抽出。その波長を分析することで対象の健康状態を把握することに成功した。これには、民生機器のデジタルカメラ「LUMIX」で培われたフィルター処理&ノイズ除去技術をより向上させた画像処理技術が活用されている。
「まだ医療分野への導入は未定ですが、医療レベルでも使える水準に達している」と中村氏は自信をのぞかせる。

「今後、ディープラーニング機能を活用すれば、対象の状態に加えて、いまどんな気持ちかなどの感情面の把握に踏み込むこともできるでしょう。さまざまな業界で働く人のストレスを検知することで、結果として長時間労働の解消や生産性の向上につなげられると考えています。人々の生活の質の向上に貢献する技術に育てていきたいです」(中村氏)

(2)在席状況を検知:柔軟な働き方・効率化をバックアップ

画像:オフィス内で上司の居場所がわからないイメージ

「上司の承認が必要なのに、上司の居場所がわからず判がもらえない」…このような体験をしたことがあるビジネスマンも多いのではだろうか。業務の効率化を図るうえで、こうした“ムダ”の改善は欠かせないだろう。とくに「働き方改革」の一環で、テレワークや在宅勤務など、働く場所・時間の柔軟化が社会的に推進される動きのあるなか、従業員の居場所や部屋の使用状況などを把握・共有することは、業務効率化に急務といえる。

そのような現場の声に対応すべく、現在、コネクティッドソリューションズ社・イノベーションセンターでは「在席検知システム」の実証実験を進めている。

センター内にある10数台のセキュリティカメラが、写し出した画像から人物を見つけ、在席状況を認識。その状況は、誰でも閲覧できる社内ポータルサイトのシステム画面に表示され、部署ごとに管理職の在席・不在を確認することができる。在席状況は定期的に更新され、ほぼリアルタイムで対象がいるかどうかがわかる仕組みだ

在席状況がわかる他、会議室や共有スペースの使用状況も確認できる

「実証実験に際しては、プライバシーの問題を考える必要がありました。情報セキュリティや法務などの担当部署と連携し、適切な周知や運用にかかるルールを明文化していきました」と話すのは、同センターの藤松健氏。実験開始から約2年の運用実績に加え、同センター内からは「上司が席にいるタイミングに行くことで時間的ロスがなくなった」などの好意的な反応を獲得しているという。

コネクティッドソリューションズ社
センシング事業統括部
センシング事業開発部
藤松 健氏

「導入当初は人を探す機能のみだったのですが、利用者の要望を受けて会議室や共用スペースの利用状況も確認できるようにシステムを進化させてきました。現在は、センター内で実績を積みながら、外販に向けた提案活動も推進しており、引き合いも増えています。」(藤松氏)

この技術を進化させれば、さまざまな現場での活用が期待できるという。例えば店舗であれば、待ち時間の把握や、混雑に応じた人件費の適正投入に活かすなど。また福祉や介護施設であれば、保護すべき対象が在所しているかどうかなどの速やかな確認を実現できる。藤松氏は、利用者・対象者双方にとってのメリットを目指しているという。

「今後は席にいる・いないに加えて、例えば電話をかけているなど、対象者が声がけに適しているかわかるように技術を進化していきたいと考えています。時間は誰にとっても有限です。技術で時間のロスを防ぐとともに、豊かな働き方・生き方ができる社会を支えていきたいです」(藤松氏)

(3)収穫を代行:トマトロボットが、農家の働き手不足解消を支える

画像:トマトロボット

とあるトマト農園では地域の高齢化が進み、働き手不足が深刻化。それに伴う残業が常態化している。その問題解決を目指し、現場とパナソニックが協力して取り組んでいるのが、トマト収穫用ロボットの開発だ。トマトの色や、房などの部位を「画像センシング技術」で認識・識別し、その情報にもとづいてロボットが作動。6秒に1個というスピードで、赤く熟したトマトのみを傷つけることなく収穫することができる。3年半に及ぶ実証実験を行い、実用化まであと少しという段階にきているという。

「トマト収穫ロボットのような農業用ロボットは、実証実験が欠かせず、国内外含めて実用化に成功した事例は、ほとんどありません。そこで、実際に働き手不足に悩む農園様の協力を得ながら実証実験を進め社会課題の解決につなげたいと思っています」。
そう語るのは、コネクティッドソリューションズ社・イノベーションセンターの岡本眞二氏だ。

コネクティッドソリューションズ社
イノベーションセンター
IoTサービス事業統括部
ミューソケッツ事業推進部
岡本眞二氏

一般的に、農業用ロボットは工業用ロボットに比べて実用化が難しい。ロボットに合わせて屋内環境やレイアウト・商用電源を整備できる工業用とは異なり、刻々と変化する多様な環境に適応した識別・動作が求められるためだ。例えば天気や時刻によって照明条件も変化するため、画像処理の難易度も高い。

2018年3月現在、トマトロボットに搭載したカメラによるトマト識別率は、農園側が希望する水準を優に超える93パーセントを達成。既に「人間以上」の精度を誇り、収穫スピードも改良を加えるたびにアップしているという。

「トマト収穫ロボットによって夜間に収穫を行えば、従業員は朝の出勤後、すぐに選果やパック詰めなどの作業に入れます。人手不足解消だけでなく、技術で農業を一層豊かな産業に変えていきたいと考えています」と、岡本氏は実用化に向けた思いを語ってくれた。

以上、画像技術を活かした3つのソリューション事例を取材・紹介してきたが、共通するのは、現場が抱える課題を適切に読み解いてソリューションを生み出す「現場力」だ。その力は、2018年に100周年を迎えるパナソニックが長年培ってきた高い技術によって支えられている。「現場課題を解決し、現場を支え、現場からより良い社会に変えていく」コネクティッドソリューションズ社の取り組みに、今後も注目していきたい。

ライタープロフィール

中野渡淳一(フリーライター):1965年、東京都生まれ。さまざまなB2B事例の取材の他、旅やカルチャーなど幅広い分野で、Web・紙媒体問わず執筆活動を行なっている。