東映株式会社様

放送・業務用映像システム 「シネマカメラ」
闇の表現+色の方向性重視でカメラを選択、邦画初のドルビーシネマにも対応。

水谷豊監督第2弾「轢き逃げ ー 最高の最悪な日 ー」でVARICAM LT、AU-EVA1を採用

2019年5月10日から全国にて公開された映画「轢き逃げ - 最高の最悪な日 -」(配給:東映)は、国民的俳優でもある水谷豊様が自ら監督を務められた映画作品の第2作目です。本作では脚本も手がけるなど、轢き逃げ事件を起こした犯人とそれを取り巻く人々の、複雑な心情を描く本格的なサスペンスタッチの作品に仕上がっています。 この撮影にはメインカメラにVARICAM LTが、また激しいアクションなど機動性を重視するため、サブカメラとしてAU-EVA1も採用されました。 本作は、邦画初のドルビーシネマ版制作という点でも注目を集めています。

写真:© 2019映画「轢き逃げ」製作委員会
© 2019映画「轢き逃げ」製作委員会

採用の経緯

2台のカメラのカラーマッチングの良さが決め手

今回は作品のほとんどのシーンが神戸の街を舞台に、ある地方都市という設定でロケが行われました。 暗い屋外や室内シーンも多い作品のため、今回VARICAM LTとAU-EVA1を採用した経緯を、本作の撮影監督、会田正裕様 J.S.C.(株式会社アップサイド様)は次のように語っています。
「VARICAM LTにしてもEVA1にしても、混乱しないメニュー操作など、現場でとにかく使いやすかったです。 そして、どちらもデュアルネイティブISOが装備されているので、暗いところに強いカメラです。 もちろんその利点は活かせる作品でした。 フェイストーンも本体から出るRec.709の色も素直でとても使いやすかったです」。
さらにこの2台を採用した理由として、今回の作品ならではのポイントをご指摘頂いています。
「特に、作品後半に出てくる本作の見せどころとなる夜の室内乱闘のシーンでは、狭い室内で1夜で70カット以上もの撮影を行うという厳しい現場でした。 そのため、セットチェンジなどのリスクを軽減し、撮り回しも良い機動性を重視して、あえてこのシーンではAU-EVA1を使ってISO2500に増感して撮影しています。 本来ならばこのシーンは、ISO5000のベース感度の利点を利用して(減感で)、VARICAM LTを使用するのが常套手段かと思いますが、映画というのは、全てにおいて高画質である必要はないと思っています。 また、EVA1のノイズの素性がよく、デジタル的ないやらしさを感じなかったことも使用に至った要因です。 ノイズがある=闇を感じるという、闇の表現をする一つの方法としてEVA1を使ってみました」。

写真:メインカメラはVARICAM LTを使用してドルビーシネマを意識した4K撮影が行われました。特に暗部での撮影ではデュアルネイティブISOで、ISO5000に減感して撮影。
メインカメラはVARICAM LTを使用してドルビーシネマを意識した4K撮影が行われました。特に暗部での撮影ではデュアルネイティブISOで、ISO5000に減感して撮影。
写真:もっとも暗いとされる映画館 内の暗闇のシーンでは、ISO5000のベース感度から感度をISO4000に設定、色温度は3200K。
もっとも暗いとされる映画館 内の暗闇のシーンでは、ISO5000のベース感度から感度をISO4000に設定、色温度は3200K。
写真:記録フォーマットはAVC-Intra 4:2:2に設定して撮影が行われました。
記録フォーマットはAVC-Intra 4:2:2に設定して撮影が行われました。

システムの紹介

カメラ内4K収録を基本に、セッティングは極力シンプルに

「全編VARICAM LTをメインカメラに、AU-EVA1をサブカメラとして使用しています。 レンズはEFシネマレンズのコンパクトズーム(15.5-47mm T2.8 L S、30-105mm T2.8 L S)をメインに使用しました。カラーセッティングはV-LOOK 2、今回はドルビーシネマ版を制作することが決定した中で、ほとんどの素材はカメラ本体内で4K収録するほか、一部をATOMOS社のSHOGUN(モニター一体型レコーダー)を使って外部収録しました。 システム的には全体的に極力シンプルになるようにしました。 EVA1は機動性を重視して、モニターやファインダーも外してスチールカメラ並のコンパクトさで撮影した時もあります」(会田正裕様 J.S.C.)。

写真: AU-EVA1は主にVARICAM LTのサブ機として活用されましたが、その小型ボディの機動性を活かして、場面によってはメインカメラとしても活用されました。
AU-EVA1は主にVARICAM LTのサブ機として活用されましたが、その小型ボディの機動性を活かして、場面によってはメインカメラとしても活用されました。

導入を終えて

フィルムカメラと同じ特性をもつシネマカメラシリーズ
日本映画初のドルビーシネマ作品としても挑戦

邦画初となるドルビーシネマ版の制作については、「本作品は、撮影時から邦画初のドルビーシネマ対応作品になるということも決まっていました。4KHDRのプロジェクションを専用シアターで鑑賞するドルビーシネマにすると、今までそれほど気にならなかったことが一気に見えてくるんですね」。
2つのサイズのカメラの選択は、映画作品撮影という点でさらに重要なポイントがあるようです。
「メインはVARCAM LTで撮影しています。 ただし、例えば車中のシーンなどで引きじりが1cmでも欲しい場合などでは、レンズの見え方を重視してEVA1を多用しています。
この2つのカメラは、複雑なミックス光やフェイストーンでも、グレーディングしたときに困らないんですよ。 特に人の肌色は敏感なところがあり、ただ肌色の出色が良いということだけではなく、コントロールしていったときにそこにちゃんと応えてくれる、その部分が最も気に入ってます。 今回思ったのはVARICAMシリーズはカメラのサイズを変えても、ルックをほぼ同じ感じで撮れるということ。 これはフィルムカメラ時代にできていたことがようやくデジタルでもついに実現したな、というイメージでした。 フィルム時代はフィルムの種類さえ同じであれば、大きいカメラでも小さなカメラでも同じルックで撮れたのです。 しかしビデオ収録になって、メインの大きなカメラと全く同じルックで撮れる小型のビデオカメラというのは、正確にはこれまでずっと存在してこなかった。 それがこのVARICAMシリーズでは、同じ4K環境でVARICAM 35、VARICAM LT、そしてEVA1と3兄弟が、多少の機能の差異はあれど、色の方向性=ルックという部分では一致しています。 解像度やS/N特性、ダイナミックレンジの違いがあっても、ルックが安定していることの方が、ドラマや映画においては、後の編集で各々のカットを混ぜやすいという利点が大きいと思いました」。

会田正裕様 J.S.C.

日本撮影監督協会(J.S.C.) 会員
1965年生まれ
人気刑事TVドラマ『相棒』シリーズの撮影を16年間務め現在に至る。現場には常に最新技術を積極的に導入、最新のワークフロー設計構築など、日本のTV/映画界におけるデジタル撮影を牽引する一人。近年は劇場映画の撮影監督としても活躍。『相棒 - 劇場版 -』4部作とともに『HOME 愛しの座敷わらし』(監督:和泉聖治)、『少年H』(監督:降幡康男)、『TAP -THE LAST SHOW』(監督:水谷豊)など。

写真:撮影監督 会田正裕様 J.S.C. (株式会社アップサイド様)
撮影監督
会田正裕様 J.S.C.
(株式会社アップサイド様)

納入機器

製品写真:4Kカメラ/レコーダー VARICAM LT

4Kカメラ/レコーダー VARICAM LT ×1台

製品写真:メモリーカード・カメラレコーダー AU-EVA1T8

メモリーカード・カメラレコーダー AU-EVA1T8 ×1台